すぐにやるべき3つのこと
2025.11.08 <00958>
1. 「退職までに完済できなかった」――それでも大丈夫
60代を迎えるころ、こんな相談をよくいただきます。
「退職金でローンを一括返済するべき?」
「あと10年残っているけど、年金生活で返せるのか心配…」
「繰上げ返済と老後資金、どちらを優先すればいい?」
多くの方が、「ローン=早く完済しなければいけない」と考えます。
でも実は、**“慌てて完済しない方がいいケース”**もあるんです。
大切なのは、
「ローンをなくすこと」ではなく、「返せる仕組みを作ること」。
老後の家計は、もう「収入で返す」だけではなく、
“資産のバランス”で成り立つ時代です。
では、60代で住宅ローンが残っている方が、
今すぐやるべき3つのステップをお伝えします。
2. ステップ①「返済期間」と「金利タイプ」を見直す
まず最初に確認すべきは、
**「残り期間」と「金利タイプ」**です。
💡① 残り期間の確認
ローン残高がある場合、
- 残り何年で完済か
- 月々の返済額はいくらか
- ボーナス払いがあるか
を整理します。
もし「残り10年以上」「金利2%以上」という条件なら、
**金利見直し(借り換え)**で家計の負担を軽くできる可能性があります。
📉借り換え例
- 残高:1,000万円
- 金利:2.0% → 0.8%へ
- 残期間:10年
→ 利息の総額が 約60万円以上 減るケースもあります。
💬 FPポイント
60代でも、安定収入(年金+再雇用など)があれば借り換え可能な銀行があります。
「もう年齢的に無理」と決めつけず、
まずはシミュレーションを取ることが第一歩です。
💡② 金利タイプの見直し
変動金利で返済している方は、金利上昇リスクにも注意が必要です。
今後は日銀の政策変更で金利が上がる可能性も。
「残り10年以内なら固定金利に変える」ことで、
返済額を安定させる安心感が得られます。
3. ステップ②「繰上げ返済」と「生活資金」のバランスを取る
次に大切なのが、一括返済しすぎないこと。
退職金を使って一気に返す人も多いですが、
「手元資金を減らしすぎて生活費が足りない」という相談が非常に多いのです。
💡繰上げ返済は“部分的”が正解
退職金で1,000万円受け取ったとして、
ローン残高が800万円ある場合でも、
全額返済はおすすめしません。
理由は簡単。
老後は「収入が減る」「想定外の支出が増える」時期だからです。
📘理想の資金配分イメージ
| 用途 | 金額 | 目的 |
|---|---|---|
| 住宅ローン一部返済 | 300〜400万円 | 毎月の返済額を軽くする |
| 生活防衛資金 | 200〜300万円 | 医療・介護・修繕など |
| 老後生活資金(運用含む) | 300万円前後 | ゆるやか運用で確保 |
→ 無理に完済せず、「手元に残すこと」が安心につながります。
💬 FPポイント
- ローン金利より運用利回りが高い場合は、返済より運用を優先する選択も。
- 「返済する安心」と「資金を残す安心」、どちらを大切にしたいかを考えることが大切です。
4. ステップ③「退職後のキャッシュフロー表」を作る
ローン返済をどうするかを考えるには、
“今後の家計の見通し”を数字で確認することが欠かせません。
📊 キャッシュフロー表とは
- 年金収入
- 生活費
- 医療・税金・趣味などの支出
- ローン返済
をすべて1枚にまとめて、
「何年後に資金が不足するか」「どこで余裕が出るか」を見える化する表です。
💡作成のポイント
1️⃣ 年金額を正確に把握(ねんきん定期便で確認)
2️⃣ 支出は“月+特別費”に分けて入力
3️⃣ 住宅ローンは“返済終了年”を明記
4️⃣ 退職金・運用資金の取り崩しも反映
📈 FPが伝えたい視点
キャッシュフローを作ると、
「いつまでに完済しておけば安心か」が見えてきます。
例えば、
70歳までに完済しても老後資金が残る
75歳でも返済を続けても資金が尽きない
というシミュレーションができれば、
“焦らず、根拠のある判断”ができるようになります。
5. 「住宅ローンを持ちながら年金生活」は珍しくない
今の60代では、
**退職後も住宅ローンを抱える世帯が全体の約30%**にのぼります。
昔のように「定年前に完済」が当然ではなくなりました。
共働きや住宅購入年齢の上昇により、
“ローンを持ちながら老後を迎える”ことは、
今や特別なことではないのです。
💡とはいえ注意したいこと
・収入が減る分、返済比率(返済額÷収入)は高くなる
・医療費や修繕費が同時期に増える
・「固定費の見直し」が遅れると資金が圧迫される
→ だからこそ、早めに家計のスリム化+返済計画の見直しをしておくことが重要。
6. FPがすすめる「安心のための3つのチェックリスト」
最後に、今日からできる実践ステップをまとめます。
✅① ローン内容の「棚卸し」
□ 残高・金利・残期間を確認
□ 変動なら固定への切替も検討
□ ボーナス払いがある場合は再設定
✅② “返済後”の生活費を試算
□ 年金額(手取り)を把握
□ 医療・保険料・税金を反映
□ 月10万円以下の返済が目安
✅③ 家計全体のバランスを整える
□ 退職金の使い道を3分割(返済・生活・運用)
□ 不要な保険や通信費を削減
□ 繰上げ返済は“安心ラインを残して”
7. まとめ:「返し方」を整えれば、人生の後半はもっと自由に
住宅ローンが残っていても、焦る必要はありません。
重要なのは、
「どう返すか」「どう備えるか」「どう楽しむか」
ローンは「不安の種」ではなく、
“人生のバランスを考えるきっかけ”です。
💡FPからのメッセージ:
- 返済期間を短くしすぎず、無理のないペースで
- 手元資金を残して、急な支出にも対応できる安心を
- 住宅を“負担”ではなく“安心の拠点”に変える
ローンを上手に整えた人ほど、
老後をのびのびと楽しんでいます。
「返す」ことにとらわれず、
**“暮らしを守る返済設計”**を考えていきましょう。