退職金・年金・貯金、どう使えば安心?

2025.11.2 <00952>

1. 「これからの人生、どう使えばいいの?」という不安

長年勤めた会社を退職し、退職金の入金通知が届いた瞬間。
「これで少しは安心できる」とホッとする一方で、
心のどこかにこんな不安がありませんか?

「このお金、どうやって使っていけばいいんだろう?」
「年金だけで足りるのかな?」
「何年分の生活費になるんだろう?」

実は、60代で多くの方が共通して感じるのが、
“お金をどう守り、どう使えばいいか分からない”という不安です。

人生100年時代。
65歳で退職しても、その後の生活は20〜30年続きます。
退職金・年金・貯金は、その長い時間を支えるための大切な“燃料”です。

でも、燃料も「どう使うか」を間違えると、早く尽きてしまう。
逆に、計画的に使えば、安心して最後まで暮らせます。

今日のテーマは、そんな 「お金を減らさずに生かす」 ための“取り崩し計画”です。


2. 老後資金の“全体像”を整理しよう

まずは、老後に使えるお金の全体像を把握しましょう。

60代で多くの人が持っている資産は次の3つです👇

資金の種類主な内容特徴
① 退職金勤続年数に応じて支給される一時金まとまった資金。税制優遇あり
② 年金公的年金+企業年金など毎月の生活費のベースになる
③ 貯金・運用資産預貯金・iDeCo・NISAなど目的に応じて引き出しやすい

ここで大事なのは、「3つを分けて考える」こと。
退職金を“貯金の延長”としてすべて口座に入れてしまうと、
気づけば少しずつ減ってしまうというケースが多いです。

まずは、資金を「使う目的」で整理してみましょう。


💡使う目的で“3つの箱”に分ける

1️⃣ 生活費の箱
 → 毎月の生活を支えるお金(年金+一部貯蓄)

2️⃣ 特別支出の箱
 → 車の買い替え・旅行・住宅修繕など、一時的に使うお金

3️⃣ 将来備えの箱
 → 医療・介護・相続など、“万が一”のために残すお金

この3つを意識することで、
「何に使っていいお金」と「手をつけないお金」が明確になります。
家計の安心は、“お金の場所”を決めるところから始まります。


3. 退職金の「使い道」を間違えないために

退職金は、老後資金の柱になる大切なお金。
ですが、受け取った直後が最も減りやすい時期でもあります。

退職祝いの旅行、家のリフォーム、車の買い替え、子どもへの支援…
気づけば数百万円があっという間に出ていく、というケースも。

💡退職金でやってはいけない3つのこと

1️⃣ “なんとなく”預金に入れっぱなしにする
 → 低金利のままでは資産が目減り。必要資金と運用資金を分けて。

2️⃣ 一括で使ってしまう
 → 車やリフォームなどは、“タイミングと優先順位”をつける。

3️⃣ 勧められるままに投資する
 → 退職直後は判断力が鈍る時期。焦らず「生活費の流れ」を見てから。

✅ポイント

退職金は、まず「1年分の生活費」として手元に確保し、
残りは“中長期的に取り崩す設計”をするのが理想です。


4. 年金+取り崩しの「黄金バランス」を知ろう

年金は毎月の“定期収入”。
一方で、退職金や貯金は“ストック(貯めたお金)”。

この2つのバランスをとることが、
老後資金を長持ちさせる最大のポイントです。

💰理想の目安

年金で生活費の7割をまかない、残り3割を貯蓄から補う。

たとえば、毎月の生活費が25万円なら👇

  • 年金収入:17〜18万円
  • 貯蓄からの補填:7〜8万円

このように「使う割合」を決めておくと、
生活費が安定し、貯金の減り方も緩やかになります。


5. “取り崩し計画”の基本ルール3つ

① 「使う順番」を決める

退職金や貯蓄を、一度に使わずに“順番”を設計することで安心度が変わります。

💡一般的な使い方の順序
1️⃣ 現金・普通預金(いつでも使えるお金)
2️⃣ 定期預金・個人年金・保険満期金
3️⃣ 投資信託・iDeCo・NISAなどの運用資産

流動性(使いやすさ)の高いものから使い、
長期で運用するお金は“最後の砦”として残します。


② 「取り崩し率」を決める

老後資金を長持ちさせるためには、
毎年どれくらい取り崩すかのルールを作ることが重要です。

FP業界でよく使われる目安が「4%ルール」。
年間の生活費を、総資産の4%以内に抑えるという考え方です。

たとえば、
老後資金が2,000万円ある場合、
→ 1年の取り崩し額は 80万円(=月6.6万円) が目安。

これを守れば、20年以上の老後にも対応できる計算です。


③ 「運用と引き出し」を組み合わせる

すべてを現金で持つと、インフレ(物価上昇)に弱くなります。
一部を「守りながら増やす運用」に回すことで、
お金の寿命を延ばすことができます。

例えば:

  • 安定型の投資信託(債券・バランス型)
  • 退職後も継続できるiDeCo・つみたてNISA
  • 個人向け国債(変動10年)

「生活費の5年分は現金」「それ以外は安全運用」
といった形で、バランスを取るのが理想的です。


6. 実際のシミュレーション例

📊モデルケース:夫65歳・妻63歳の場合

項目金額(年間)備考
公的年金(夫婦)240万円月20万円程度
生活費300万円月25万円前後
不足額60万円貯蓄から補填
老後資金総額2,000万円退職金+貯金

この場合、年間60万円を貯蓄から取り崩すと、
約30年で1,800万円を使い切るペース。
年金収入と合わせて、85歳前後まで安定して生活できます。

もし、生活費を月22万円に抑えられれば、
貯蓄の寿命は 100歳超 に延びます。

つまり、「支出を少し整える」だけでも老後の安心度はぐっと上がります。


7. 注意!退職後に増える“見えない支出”

老後の家計で意外と多いのが、“思ったより出費が多い”という声。
主な理由は、次の5つです👇

1️⃣ 健康保険料(国保や任意継続)が高い
2️⃣ 住民税が前年所得で計算されるため、退職直後に一気に請求が来る
3️⃣ 交際費・贈答費・冠婚葬祭などが増える
4️⃣ 家や車のメンテナンス費が発生する
5️⃣ 旅行や趣味など、「時間のゆとり」が“お金のゆとり”に変わる

これらは、退職直後の“安心感”で見落としがち。
最初の1〜2年こそ、予算管理をしっかり行うことが大切です。


8. 「使うための貯金」に考え方を変えよう

日本人の多くは「貯めること」に慣れています。
でも、老後は「使うこと」に慣れる時期。

いちばんもったいないのは、

「お金はあるけど、使うのが怖い」

という状態。

お金は、安心して生きるために貯めてきたものです。
必要なときに、ためらわずに使うためには、
「取り崩しルール」があると心が軽くなります。

たとえば、

  • 毎年の生活費+“楽しみ費”を予算化
  • 余った分は次の年に繰り越す
  • 必要以上に節約せず、計画的に楽しむ

“使うことを前提にした家計設計”が、
第二の人生を豊かにしてくれます。


9. FPが伝えたい「取り崩し上手な人」の共通点

ファイナンシャルプランナーとして多くの60代の方と関わる中で、
お金を上手に使っている人には共通点があります。

1️⃣ お金を数字で把握している(ざっくりでも可)
2️⃣ “何に使うか”を明確にしている(目的貯金)
3️⃣ 焦らず・長期で考えている(10年単位の視点)
4️⃣ 夫婦で共有している(片方だけが把握していない)
5️⃣ 専門家に一度相談している(第三者の目を入れる)

この5つを意識するだけで、
不安は「見える課題」に変わり、行動につながります。


10. まとめ:お金は“守る”だけでなく“生かす”もの

退職金も年金も、長い時間をかけて築いてきた大切な資産。
でも、そのお金を「守ること」だけに意識を向けてしまうと、
人生の楽しみを見失ってしまうことがあります。

お金の安心とは、「使っても減らない」と信じられること。
そのためには、
✅ 目的ごとに分ける
✅ 年金とのバランスを見る
✅ 取り崩し率を決める
この3つが基本です。

老後資金を“安心して使う仕組み”を作れば、
毎日の生活がもっと自由で、もっと豊かになります。

人生の後半は、
「いくらあるか」よりも「どう使うか」が幸福度を決める時代。
今日から少しずつ、“使うための家計設計”を始めてみましょう。

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