2025.9.15 <00904>
はじめに
「退職金が入ったら、まず何に使う?」
こんな話題が友人や家族の間で出ることはありませんか?
退職金は、人生の中で手にする最後の大きなまとまったお金です。
しかし、この退職金――実は気を付けないとあっという間に消えてしまうことも。
旅行や車の購入、子どもへの援助など、使い道はいろいろありますが、
退職後の生活費や老後資金に困らないためには、計画的に活かすことが大切です。
この記事では、退職金をムダにしないための考え方や、
安心して老後を迎えるための賢い使い道と運用方法を、わかりやすく解説します。
1.退職金は“老後生活の柱”になる大切なお金
退職金は、定年退職後の生活に直結する重要な資金です。
厚生労働省の調査によると、
退職金の平均額は約1,600万円前後(大企業の場合は2,000万円超)。
一見多く感じますが、老後資金として考えると決して十分とは言えません。
老後に必要なお金の目安
総務省の家計調査では、夫婦2人世帯の老後の生活費は月約25~30万円とされています。
年間で約360万円。
60歳から90歳までの30年間で計算すると――
360万円 × 30年 = 1億800万円
この金額を年金と退職金、貯蓄でまかなう必要があります。
つまり、退職金は単なる「ボーナス」ではなく、
これからの生活を支える基盤なのです。
2.退職金を“ムダにしない”ために知っておきたい3つの優先順位
退職金が入ると、「旅行に行こう」「車を買い替えよう」と気持ちが大きくなりがちです。
ですが、まずは冷静に優先順位を決めることが大切です。
① 住宅ローンなど借金の返済
退職後も住宅ローンが残っている場合、
退職金を使って一括返済を検討することをおすすめします。
定年後は収入が減るため、毎月の返済が家計の大きな負担となります。
返済がなくなれば、生活費を大きく抑えることができ、精神的にも安心です。
ワンポイント
繰上げ返済をする前に、住宅ローン控除や手数料を確認しましょう。
残りの年数や金利によっては、返済しすぎが損になるケースもあります。
② 老後資金としての貯蓄・運用
退職金の大部分は、老後資金として確保しておくことが重要です。
「今後30年間、どれだけお金が必要か」を考え、
生活費を支えるための資金を分けて管理しましょう。
老後資金管理の基本
- **生活費の5~10年分は「安全資金」**として現金や定期預金で確保
- 残りは「増やすお金」として投資信託や債券などで分散運用
例)退職金が2,000万円の場合
- 800万円:安全資金(現金・定期預金)
- 1,200万円:運用資金(投資信託・債券など)
こうすることで、急な出費にも対応でき、
長期的な資産形成にもつながります。
③ 趣味や旅行など“楽しみ資金”
せっかく頑張って働いてきたのですから、
退職金を自分や家族の楽しみのために使うことも大切です。
ただし、ここが注意ポイント。
「老後資金」と「楽しみ資金」を分けずに管理すると、
気づかないうちに使いすぎてしまう可能性があります。
最初から予算を決めておくことが、無駄遣いを防ぐコツです。
例えば、「旅行資金は100万円まで」など、ルールを作っておくと安心です。
3.退職金を賢く運用する方法
退職金は大きなお金だからこそ、運用方法にも注意が必要です。
間違った運用をすると、元本割れや大きな損失につながるリスクもあります。
低リスク運用が基本
退職後は、収入が減るため、
「増やす」よりも「減らさない」運用が基本です。
おすすめ運用例
- 個人向け国債(変動10年)
→ 元本保証+インフレ対応で安心 - 債券型投資信託
→ 値動きが比較的安定しており、分散投資向き - バランス型投資信託
→ 株式・債券を組み合わせ、リスク分散
注意!退職金詐欺に気をつけて
退職金が入ると、金融商品の勧誘が一気に増えます。
特に以下のケースは注意が必要です。
- 「必ず儲かる」と断言する投資話
- 高額な保険商品の一括契約をすすめられる
- 友人や知人からの投資勧誘
退職金は人生を左右する大切なお金。
不安なときは、ファイナンシャルプランナーなど第三者に相談してから決めましょう。
4.退職金と税金の関係を理解しておこう
退職金には退職所得控除が適用されるため、
他の収入よりも税負担が軽くなります。
退職所得控除の計算式
20年以下:40万円 × 勤続年数
20年超:800万円 + 70万円 × (勤続年数 − 20年)
例:勤続35年の場合
→ 800万円 + 70万円 × 15年 = 1,850万円
退職金がこの金額以下なら、所得税はかかりません。
しかし、退職後に再雇用される場合や、退職金を分割受け取りする場合は、
課税のタイミングに注意が必要です。
5.退職金を賢く活かすための3ステップ
最後に、退職金を上手に活用するためのステップをまとめます。
STEP1:現状把握
- 家計の支出を整理
- 住宅ローンや借金の残高を確認
- 老後の生活費を試算する
STEP2:資金の振り分け
- 生活防衛資金(5~10年分)
- 運用資金(長期資産形成)
- 趣味・旅行など楽しみ資金
STEP3:運用と見直し
- 元本保証を基本に低リスク運用
- 年に1回は家計と資産をチェックし、必要に応じて調整
まとめ:退職金を人生後半の安心につなげるために
退職金は、あなたと家族のこれからの暮らしを守る大切なお金です。
「何となく使う」のではなく、
計画的に、目的を持って使うことが何より大切。
- まずは借金を整理
- 老後資金を確保
- 楽しみ資金を分ける
この順番を守ることで、
退職金をムダにせず、安心とワクワクを両立させることができます。
これから迎えるセカンドライフを、
退職金を上手に活かして充実させていきましょう。