― 後悔しない使い方3ステップ ―
2025.11.13 <00963>
1. 「貯めたはずなのに不安」——退職金の落とし穴
退職金を受け取った瞬間、ほっとする人が多い一方で、
時間が経つほどにこんな不安の声を聞きます。
「これで老後は安心…のはずが、なんとなく心配」
「何に使えばいいか分からず、結局そのままにしている」
「銀行に預けているだけで、減っていく気がする」
FP相談でも、「退職金の使い方」は上位の悩み。
なぜかというと、退職金は“人生で一度しか手にしない大金”だからです。
その分、判断を誤ると後悔が長く残る。
でも安心してください。
退職金は“守る”よりも“分ける”ことで、安心と満足を両立できます。
2. 「貯める」ではなく「分ける」という考え方
退職金は、“一括管理”よりも“目的別管理”が基本。
つまり、「何のために」「いつ」「いくら使うか」を
先に“分けておく”ことが大切です。
これは、老後の資金計画をシンプルにする魔法の方法。
💡なぜ分けるのか?
1️⃣ お金の行き先が見える → 不安が減る
2️⃣ 使う目的が明確 → 無駄な支出が減る
3️⃣ 管理がしやすい → 家計が整う
FPの視点では、「3つの財布」をつくるのが理想です。
3. ステップ① 「生活を支える財布」
退職金を受け取ったら、まず確保すべきは
**“生活を守るためのお金”**です。
📘 生活防衛資金を確保
・生活費の2〜3年分
・医療・税金・保険料などの臨時支出分
💬FPの目安:
年金が始まるまでの5年間で年100万円使うなら、
最低500万円は「使える現金」で確保。
💡こんなミスに注意
・退職金を全額定期に入れてしまう
・解約に手間がかかる金融商品にしてしまう
→ 「すぐ使うお金」は、いつでも引き出せる形で置くのが鉄則。
普通預金・ネット銀行・短期定期など、
“使いやすさ優先”で選びましょう。
4. ステップ② 「将来を守る財布」
次に確保したいのが、“未来の安心を守るお金”。
📊 具体的には
・医療・介護・住まいの修繕費
・車の買い替え
・葬儀・お墓などの準備金
💬FPの目安:
この「将来の財布」には、退職金の30〜40%を割り当てると安心。
📈 運用を検討するなら
この部分は“10年以上先に使うお金”なので、
安全性を重視した分散運用がおすすめ。
| 資産タイプ | 目安配分 | ポイント |
|---|---|---|
| 現金・預金 | 40〜50% | 必要時にすぐ使える |
| 債券・定期 | 30% | 安定性を重視 |
| 投資信託・NISA | 20〜30% | 長期でゆるやかに増やす |
※「増やす」ではなく「減らさない運用」が目的。
💬 FPポイント:
・iDeCoは60歳以降の受け取りタイミングも考慮
・つみたてNISAは“引き出しやすい運用枠”として活用可
「置き方」を工夫することで、“安心”と“育つ力”を両立できます。
5. ステップ③ 「人生を楽しむ財布」
最後は、心を満たす“ごほうび財布”。
ここをゼロにしないことが、老後の幸せに直結します。
💡使う目的を明確に
・旅行
・趣味
・孫への贈り物
・学びやボランティア
FP相談では、この「楽しみ財布」がある人ほど、
「老後が楽しい」「不安がない」と答える方が多いのです。
📘 目安配分
退職金の 10〜20% を目安に確保。
金額にすると200〜400万円程度が目安です。
→ 「この範囲なら自由に使っていい」という安心が、
お金の使い方に自信を生みます。
6. 退職金でやってはいけない3つのこと
退職金を受け取ったあと、注意すべき“落とし穴”もあります。
❌① 一括で運用商品を買う
→ 勧められるままに投資信託や保険商品に入るのはNG。
まずは**「目的を決めてから手段を選ぶ」**が鉄則。
❌② 家族への援助を“情”で決める
→ 子どもや孫への支援は素敵ですが、
「将来の生活を圧迫しない範囲」で。
贈与は“計画的に”が基本です。
❌③ 銀行や保険会社任せにする
→ 金融機関の提案は“販売側の都合”が混ざることも。
「一度立ち止まって考える」ことが何より大事です。
7. 「分ける」ことで見える安心
退職金を「一つの金額」として見ると不安が大きくなります。
でも、3つの財布に分けるだけで、気持ちは大きく変わります。
💬例:退職金1,500万円の配分イメージ
| 目的 | 割合 | 金額 | 内容 |
|---|---|---|---|
| 生活を支える財布 | 40% | 600万円 | 年金開始まで+生活費備え |
| 将来を守る財布 | 40% | 600万円 | 医療・介護・修繕費+運用資金 |
| 人生を楽しむ財布 | 20% | 300万円 | 旅行・趣味・学びなど |
このように「見える化」することで、
“今を楽しむ勇気”と“将来の安心”の両方が手に入ります。
8. まとめ:「分ける」ことで、心も暮らしも整う
退職金は、ただの“お金”ではなく、
これからの人生をどう生きたいかを映す鏡です。
「貯めておく」だけでは安心は続きません。
“目的をもって分ける”ことで、数字の安心が心の安定に変わります。
💡FPが伝えたい3つの心得
1️⃣ 退職金は「守る」より「使い方を設計」する
2️⃣ お金を“3つの財布”に分ける
3️⃣ 「楽しみの予算」を忘れない
あなたが築いてきたお金は、あなたの努力の証。
そのお金を“どう生かすか”が、
セカンドライフの豊かさを決めます。
退職金を、**「安心」と「笑顔」を生み出す資金」**に変えていきましょう。