― 家計を守る5つのチェックポイント ―
2025.11.16 <00966>
1. “老後破産”という言葉が一人歩きしているけれど
テレビやネットの記事でよく耳にする「老後破産」。
強い言葉のせいで、
「自分もそうなるのでは…」
と不安を抱く60代の方は少なくありません。
でもファイナンシャルプランナーとして断言できるのは、
**老後破産は“突然起きるものではない”**ということ。
原因は、
・収入の変化に家計が追いついていない
・支出の把握ができていない
・将来のための準備不足
のように、日常の「小さなズレ」が積み重なった結果です。
逆にいえば――
“気づく”だけで防げるもの。
今日からの行動で、家計は必ず立て直せます。
2. チェック①「年金と生活費の差」を把握しているか?
老後の家計を考える第一歩は、
“年金収入”と“毎月の生活費”の差額を知ること。
➤ 年金の目安(一般的な夫婦の場合)
- 平均月額:22〜28万円
(夫:厚生年金、妻:国民 or 厚生の場合)
➤ 一方、老後の生活費の平均
- 約26〜30万円
(食費・光熱費・医療・娯楽など含む)
✔ まず確認すべきは「差額はいくら?」
もし、
- 年金24万円
- 生活費28万円
だとすれば、月4万円の赤字。
この“差額”さえ分かれば、
・収入で補うか
・支出を整えるか
・貯蓄からの計画的取り崩しで補うか
対策が明確になります。
💡FPポイント
「足りないかどうか」ではなく、
**“いくら足りないのか”**を知ることで、
迷いが消えます。
3. チェック② 固定費が現役時代のままになっていないか?
老後の家計を圧迫するのは、
意外にも“変動費”より“固定費”。
✔ 見直しで効果が大きい固定費の例
- 保険料
- 通信費(スマホ・ネット)
- 車の維持費
- サブスク(新聞・動画サービスなど)
FP相談の例では、
固定費の見直しだけで月2〜4万円改善するケースが多数あります。
💡固定費の黄金ルール
「毎月決まって出るお金こそ、最優先で整える」
生活費を10%削るより、
固定費を1つ見直すほうが効果は大きいです。
4. チェック③ 特別支出を“積立”にしているか?
老後破産を招く要因で最も多いのが、
特別支出の管理不足です。
✔ 特別支出とは?
- 旅行
- 冠婚葬祭
- 医療費
- 車検・車の買い替え
- 住宅の修繕
- 家電の買い替え
これらは毎月ではなく“突然”訪れます。
毎月の生活費から出そうとすると、
赤字が積み重なり、
「毎月足りない…」という不安につながります。
💡解決策:特別費積立
年間の特別支出をざっくり予想し、
12で割って毎月積み立てるだけ。
例)年間24万円 → 月2万円積み立て
これだけで、
“赤字月”が消え、安定した老後家計に。
5. チェック④ 医療・介護費の備えを“現金”で確保しているか?
老後破産の大きな原因の一つが、
医療・介護費の突然の増加です。
✔ 必要になるケース
- 入院・通院が続く
- 片方の配偶者が介護状態に
- 夫婦のどちらかが働けなくなる
💡FPの結論
医療・介護費は、保険よりも
「使いやすい現金」で備えるのがベスト」。
その理由は:
- すぐ使える
- 保険より自由度が高い
- 必要額が人によって大きく違う
✔ 目安は?
100〜200万円程度の医療・介護準備資金
これがあるだけで「突然のお金」に負けません。
6. チェック⑤ 取り崩しルールを決めているか?
老後破産は、
「取り崩しすぎた結果」
ではなく、
**「ルールがなかった結果」**起きることがほとんど。
💡FPの推奨ルール
- 年間の取り崩しは“総資産の3〜4%以内”
- 「特別費」は年初に確保
- “定期引き出し”で管理する
- 投資資産は“必要時だけ”取り崩す
✔ 例:貯蓄2,000万円の場合
・年間取り崩し → 80万円
・月6.5万円程度
この範囲なら、
長期的に資産が枯れにくい構造になります。
7. FPから見える「老後破産しない人」の共通点
老後が安定している方には、共通点があります。
✨共通点①「数字」を把握している
感覚ではなく、
収入・支出・資産を“見える化”できている。
✨共通点② 家計の“流れ”が整っている
・固定費が最適化されている
・特別費も積立
・取り崩しルールがある
→ 無駄なく、ムリなく、安心して使える
✨共通点③ “将来の使い方”のイメージがある
・旅行
・趣味
・孫との時間
「何のために使うか」があると、
迷いがなくなり、後悔が減ります。
✨共通点④ 早めに気づいて整えている
老後破産は、
“早めに気づけた人”が確実に防いでいる現象です。
8. まとめ:老後破産は、対策さえすれば“遠い話”に変わる
「老後破産」という言葉は強いですが、
実態は、“小さなズレの積み重ね”。
だからこそ、
今日、気づいた瞬間から対策できる問題です。
✔ 今日からできる5つのチェック
1️⃣ 年金と生活費の差を把握
2️⃣ 固定費を現役時代のまま放置しない
3️⃣ 特別支出を積立で管理
4️⃣ 医療・介護費を現金で確保
5️⃣ 取り崩しルールを決める
FPメッセージ:
老後の安心は、年金額ではなく“お金の流れ”で決まる。
整えた家計は、必ずあなたを守ります。
不安を“知らないままにしておく”のではなく、
“見える化して整える”ことで、老後はもっと穏やかで、
もっと自由になります。