お金と心を整えるセカンドライフ設計
2025.11.10 <00960>
1. 「老後=終わり」ではなく、「再スタート」
退職のタイミングは、多くの人にとって“人生の区切り”。
でも本当は――
「終わり」ではなく「第2の人生のはじまり」。
ファイナンシャルプランナーとして60代の方にお会いすると、
こんな言葉をよく耳にします。
「働くことがなくなって、これから何をしたらいいのか分からない」
「お金はあるけど、使い方が怖い」
「自由なはずなのに、なんだか心が落ち着かない」
実はこの“もやもや”の正体は、
お金や時間の問題ではなく、
「これからの自分をどうデザインするか」がまだ描けていないことにあります。
老後は、**「働く・稼ぐ」から「使う・楽しむ・整える」**へとステージが変わる時期。
これまで築いてきた資産を、“どう活かすか”が鍵になります。
2. 老後の3つの資産を整理しよう
セカンドライフ設計で最初にやるべきは、
「お金の整理」ではなく、「資産の棚卸し」です。
老後に必要なのは、3つの資産のバランス。
💰① 金融資産(お金の安心)
銀行預金・退職金・年金・投資など。
「いくらあるか」ではなく、「どんな目的で使うか」が重要。
💡ポイント:
・生活費の2〜3年分は流動性のある資金に
・医療・介護・修繕費などは“特別支出”として別管理
・余剰資金は「ゆるやか運用」でお金にも働いてもらう
⏳② 時間資産(自由の価値)
現役時代にはなかった「時間の自由」。
これをどう使うかが、老後の満足度を大きく左右します。
💡ポイント:
・「誰と」「どこで」「何をして」過ごしたいかを明確に
・週に1日“何もしない日”をあえて作る
・時間に予定を入れるより、「目的」を入れる
🤝③ 人的資産(つながりの力)
お金以上に大切なのが、「人との関係性」。
地域・友人・家族・趣味の仲間とのつながりが、心の支えになります。
💡ポイント:
・家族との時間を「予定」に入れる
・地域活動やボランティアで社会とつながる
・“誰かの役に立てる時間”を持つ
💬FPメッセージ:
老後の安心は、“数字”だけでは測れません。
「お金」「時間」「人」この3つのバランスが整うことが、本当の豊かさ。
3. 「老後のお金」を“使う視点”で考える
多くの方が、
「お金を減らしたくない」
という気持ちから、支出を最小限に抑えようとします。
でも、老後は“使わない不安”も生まれます。
お金は、使ってこそ“安心の循環”が生まれるのです。
💡「使うこと=減る」ではなく、「活かすこと=安心」
老後の支出には、“目的のあるお金”と“なんとなく使うお金”があります。
| 種類 | 例 | 心の影響 |
|---|---|---|
| 目的のある支出 | 旅行・趣味・孫への贈り物・学び直し | 満足感・生きがい |
| なんとなく支出 | コンビニ・通販・惰性の出費 | 後悔・罪悪感 |
“目的のある支出”にシフトするだけで、
支出が減らなくても「心の安心度」が格段に上がります。
📊 FP流・お金の使い方バランス
| 用途 | 割合 | 使い方のヒント |
|---|---|---|
| 生活費 | 60% | 「必要」を整える |
| 夢・楽しみ費 | 20% | 「心」を満たす |
| 将来への備え | 20% | 「不安」を軽くする |
→ この割合を意識するだけで、“お金の使い方に迷わない”家計になります。
4. セカンドライフの「見える化」3ステップ
では実際に、どうデザインすればよいのでしょうか?
FPとしておすすめするのは、この3ステップです。
✅① キャッシュフロー表をつくる
収入(年金・運用益)と支出(生活費・医療費など)を年単位で整理。
「何歳でどんな支出があるか」を見える化します。
これにより、
・資金が減るタイミング
・使える金額の目安
・繰上げ返済や運用の判断基準
が明確になります。
✅② “使う年齢マップ”を描く
人生100年時代では、老後も約30〜40年。
「お金の使いどき」を年齢別に整理しましょう。
| 年代 | キーワード | 使い方の軸 |
|---|---|---|
| 60代 | 再スタート期 | やりたかったことに挑戦する |
| 70代 | 安定期 | 健康と趣味を中心に“質”を高める |
| 80代〜 | 生活簡素化期 | 無理なく、安心して暮らす |
💬ポイント:
「貯める」より「今をどう使うか」に意識を移すことで、
老後の時間が前向きに変わります。
✅③ “理想の1日の使い方”を描く
「1日の時間の使い方」をデザインすることも大切です。
たとえば――
| 時間帯 | 内容 |
|---|---|
| 朝 | ウォーキング・朝食・新聞 |
| 昼 | 友人とランチ・ボランティア・趣味 |
| 夜 | 家族との夕食・テレビ・日記 |
こうして“時間の設計図”を描くと、
心の充実度と支出のバランスが自然と整っていきます。
5. FPが見てきた「後悔しない老後」の共通点
これまで多くの60代・70代の方と関わってきて感じるのは、
「お金を減らさない人」より、「お金を活かせる人」が幸せだということ。
共通しているのは、次の3つです。
💬① “ためらわずに使う目的”を持っている
旅行でも、孫へのプレゼントでも、
「これをしたい」という目的がある人は、お金の使い方がブレません。
💬② “誰かの役に立つ支出”をしている
地域活動・寄付・家族サポートなど、
“お金が人のために動く”経験がある人ほど、心が豊かです。
💬③ “自分の数字”を把握している
キャッシュフローや支出を把握している人は、
不安よりも「安心して使う勇気」があります。
FP視点で言うなら、
「数字で安心を持ち、気持ちで豊かさを育てる」
これが、老後の幸せ設計の本質です。
6. まとめ:「お金を整える」と「心が整う」はつながっている
お金は、ただ貯めるものではなく、
“人生を支えるツール”。
60代からのセカンドライフは、
「いくら持っているか」よりも
「どう使っていきたいか」で幸福度が決まります。
💡まとめ:老後の使い方デザイン3原則
1️⃣ 数字で見える化する(キャッシュフロー・支出管理)
2️⃣ 時間の使い方をデザインする(目的ある毎日)
3️⃣ お金を“活かす支出”に変える(体験・人・学び)
ファイナンシャルプランナーとして伝えたいのは、
「お金の整理は、人生を整えること」。
今までがんばって築いてきた資産を、
これからは**“安心と喜びを生み出すお金”**に変えていきましょう。