“老後のお金”とどう向き合う?

― FPが見てきた「安心して生きる人」の共通点 ―

2025.11.19 <00969>

1. 老後のお金が不安…その“正体”とは?

老後を迎える60代・70代の方とお話しすると、
ほぼ必ずと言っていいほど出てくるのが、

「この先、本当に大丈夫だろうか?」
という不安です。

ただ、FPとして長く相談を受けている中で感じるのは、
お金の不安は“金額そのもの”ではなく、“向き合い方”の問題であることが多い
ということ。

実際、同じ貯蓄額でも
・安心して暮らせている人
・ずっと不安のままの人
には大きな差があります。

その差は、「資産の多さ」でも「年金額」でもありません。
FPとして多くのご家庭を見て分かったのは――

老後を安心して生きている人には、いくつかの共通点がある。

ということです。

今回は、その“安心の習慣”を具体的にお伝えします。


2. 共通点① 「現状を知ること」から逃げない

老後に安心して暮らしている人は、
まず 「自分のお金の現状を把握」 しています。

FP相談では、
・年金額
・生活費
・特別支出
・貯蓄額と運用状況
を一緒に整理していきますが、

安心している方は例外なく、
“見える化”を避けていません。

✨理由はシンプル

「知らない」ことが不安を大きくするから。

逆に「分かっている」だけで、
・優先順位が決まる
・将来の見通しが立つ
・ムダな心配が減る
という“効果”が生まれます。

安心は、自分の状況を“見に行った”人にだけ訪れます。


3. 共通点② 「家計の流れを整えている」

安心している人は、家計の特徴がはっきりしています。

✔ 固定費が最適化

不要な保険やサブスクを契約しっぱなしにしない。

✔ 特別支出を積立

冠婚葬祭・旅行・医療費など、
“年に何度か出る支出”をあらかじめ分けて管理。

✔ 支出の上限を決めている

「食費は月○万円まで」
「趣味費は月○万円まで」
と、ゆるいルールがある。

これらの共通点はすべて、
“お金の流れが一定”であることにつながります。

流れが整うと、
「今月は足りるかな…」の不安がほぼゼロになります。


4. 共通点③ 「取り崩し方のルール」を持っている

老後の資金は、
“減らさない”のではなく、“計画的に使う”ことが大切です。

安心している人は、
取り崩し額の目安を決めています。

✔ FPが推奨する黄金ルール

年間取り崩しは「総資産の3〜4%」以内。

例)2,000万円の貯蓄
→ 年間60〜80万円(=月5〜6万円以内)

このルールを守れば、
老後20〜30年の長期でも資金が枯れにくい構造になります。

何より、
「使っても大丈夫」という安心が生まれる。


5. 共通点④ 「楽しむお金を取ってある」

安心して暮らしている人の最大の特徴は、
“楽しむためのお金”をゼロにしていないこと。

老後の不安から、
・旅行
・外食
・趣味
を我慢し続ける方もいますが、
我慢はストレスをため、
逆に“浪費”につながってしまうことも。

安心している人は、
毎月または毎年の予算に
「楽しみ費」「ワクワク費」
をちゃんと入れています。

✨FPが見て感じること

心が満たされている人は、
お金を“計画的に・大切に使う”ことができます。


6. 共通点⑤ 「将来の話をできる相手がいる」

安心している人は、
“ひとりで抱え込んでいない”という特徴があります。

相談できる相手は、
・配偶者
・子ども
・友人
・FP
誰でもかまいません。

家計は「ひとりで悩む」より
「誰かと話す」ことで整っていきます。

✔ 会話には整理する力がある

話すと、
・自分の考え
・本当にやりたいこと
・不安の中身
が自然と整理されていきます。

老後のお金は、“対話”がつくる安心がとても大きいのです。


7. 共通点⑥ 「完璧を求めない」

安心している人のもう一つの特徴は、
完璧なお金管理を目指していないこと。

・一ヶ月に一度家計簿チェックできればOK
・年に一度、資産を整理
・保険は必要最低限だけ
・投資は無理のない範囲で
・時々は楽しむ出費も許す

これくらいの“ゆるやかさ”が、
実は老後にとってベストです。

完璧主義は不安を増やします。
安心は“適度なゆとり”から生まれます。


8. 共通点⑦ 「お金を“自分のために使う”視点がある」

安心している人は、
お金=自分らしく生きるための道具
という視点を持っています。

お金を「減るもの」と考える人は、
どうしても不安が増えます。

一方で、
「人生を豊かにするためのお金」
と考える人は、
お金を“活かせる”ようになります。

✔ FPが見てきた、幸せな老後の人は

・お金で経験を買う
・好きなことに時間を使う
・人に会い、つながりを育てる
・日常に小さな喜びをつくる
こうした“心の満足度”を大事にしています。

お金は、
心を満たすためにこそ存在します。


9. 共通点⑧ 「未来を“数字で描いている”」

安心している人は、
キャッシュフロー表(人生のお金の見える化)を
何らかの形で持っています。

・いつ年金が入る?
・いつ大きな支出がある?
・貯蓄は何年持つ?
・何歳まで働く?
・いつ取り崩す?

こうした“時間軸”が見えている人は、
不安が大きく下がります。

✨数字は心を安定させる

将来のお金を数字で見ると、
“根拠のある安心”が手に入るからです。


10. まとめ:“安心して生きる人”は、お金とやさしく向き合っている

老後のお金と向き合うことは、
“完璧な管理”でも、
“賢い投資”でもありません。

必要なのは――

💡 やさしく、丁寧に、自分の人生にフィットさせていくこと。


✔ FPとしての結論

老後を安心して生きる人は、
お金と戦っていません。
お金と仲良く生きています。

そのための共通点は:

1️⃣ 現状を知る
2️⃣ 家計の流れを整える
3️⃣ 取り崩しルールを持つ
4️⃣ 楽しみをゼロにしない
5️⃣ 将来を話せる相手がいる
6️⃣ 完璧を求めない
7️⃣ お金を“自分の人生の道具”として扱う
8️⃣ 未来を数字で描く

どれも今日から始められることばかりです。

老後のお金との向き合い方は、
暮らし方そのものを豊かにしてくれます。
不安があっても大丈夫。
一歩ずつ“やさしい家計”に整えていきましょう。

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