“お金を残す”より“大切に渡す”考え方
2025.11.17 <00967>
1. 相続は「お金の問題」ではなく、「心のバトン」
相続という言葉を聞くと、多くの方がこう感じます。
「揉めないように、きちんと残したい」
「なるべく多く渡さなきゃいけない気がする」
「けれど、複雑で何から手を付ければいいのか分からない」
でも、ファイナンシャルプランナーとして多くの相続に携わってきて感じるのは、
**相続は“お金の話”のようでいて、実は“心の話”**だということ。
どれだけ金額が大きくても、
受け取る人の心にしっかり届く形でなければ、本当の意味での相続とは言えません。
相続とは、
「大切に生きてきたあなたの人生を、次の世代につなぐ行為」。
そう考えると、お金を“どう残すか”よりも、
“どう渡すか”のほうがずっと大切になります。
2. 相続で本当に大切なのは “金額” ではなく “準備”
相続の相談で感じるのは、
揉める原因は「お金が少ないから」ではなく、
準備がないまま残すことにあります。
💬 よくある不安
- 遺産の分け方を決めていない
- 書類がバラバラで見つからない
- 何をどこに預けているか家族が知らない
- 本人の気持ちが誰にも伝わっていない
逆にいえば、
これらを“整理する”だけで相続は驚くほどスムーズになります。
3. “大切に渡す相続”のための3つの整理
ファイナンシャルプランナーとしてお伝えしたいのは、
相続は次の3つをそろえるだけで一気に“安心”に変わるということ。
①【ものの整理】財産を見える化する
まずは「何を持っているか」を整理。
| 項目 | 例 |
|---|---|
| 金融資産 | 預金・証券・保険・年金など |
| 不動産 | 土地・建物・共有名義など |
| 動産 | 車・貴金属・家財 |
| 借金 | ローン・負債・保証人関係 |
💡ポイント
“書き出すだけ”で、
・漏れがなくなる
・家族が理解しやすい
・後の手続きがスムーズ
になります。
エンディングノートに書くのも有効です。
②【気持ちの整理】何を、誰に、どう渡したいか
実はこれが最も大事な部分です。
相続で揉めるのは金額の大小ではなく、
“気持ちが伝わっていない”ことが原因。
💬 例えば…
- 「長男には家を継いでほしい」
- 「娘には生活の助けにしてほしい」
- 「孫の大学資金に使ってほしい」
- 「土地は売って分けてほしい」
こうした“想い”を言葉にしておくことで、
家族は納得しやすくなり、争いも避けられます。
③【制度の整理】最適な方法を選ぶ
相続は「制度を知っているかどうか」で結果が大きく変わります。
代表的な制度3つ
1️⃣ 遺言書(公正証書・自筆)
→ 遺志を法的に残す最も確実な手段。
2️⃣ 生前贈与
→ 年110万円の非課税枠や、教育資金贈与などの制度を活用。
3️⃣ 生命保険
→ 相続手続きとは別枠で指定受取人に渡せる“安心のお金”。
💡制度を活かす=“大切に渡せる形に変える”こと。
4. 遺言書は“財産分け”だけでなく、“感謝”を残せる
遺言書は「財産の指示」だけのものだと思っていませんか?
実は、遺言書は
“最後のメッセージ”を伝える最も優れたツールでもあります。
💬 遺言書で伝えられること
- 子どもへの感謝
- 配偶者へのねぎらい
- 苦労をかけたことへの気持ち
- 家族への願い
- 「仲良くしてほしい」という想い
これらは、
どんな高額の遺産よりも、
残された家族にとって大切な“宝物”になります。
5. 生前贈与は“税金対策”ではなく“家族へのプレゼント”
「生前贈与=相続税を減らすもの」
そう思われがちですが、本質は違います。
本来、生前贈与は
**“家族の役に立つ形で、必要なときに渡せる”**という最大のメリットがあります。
💡 生活の助けになる生前贈与の例
- 子どもの住宅購入資金
- 孫の教育費
- 孫の成人・結婚祝い
- 家族旅行のプレゼント
税金はもちろん大事ですが、
“今、必要な人に役立つ形で渡せる”ことのほうが価値があります。
6. 生命保険は「遺族を支えるお金」として強い
生命保険は、相続の中でとても便利な仕組みです。
💡 生命保険が役に立つ理由
- 指定受取人が明確
- 遺産分割をしなくてよい
- 手続きが早い(1〜2週間で振り込み)
- 相続税の非課税枠がある(500万円 × 法定相続人)
家族の生活の立て直しに“すぐ使えるお金”として最適です。
7. 相続を考えるときに最も大切なこと
ファイナンシャルプランナーとして伝えたいのはただひとつ。
「相続は、“争う”ものではなく“つなぐ”もの」
家族が揉めるのは、“お金”が原因ではなく、
“準備不足”と“想いの伝わらなさ”が原因です。
相続は、準備をするほど家族の心が穏やかになります。
そして、あなたの気持ちが届きます。
8. まとめ:相続とは、“心の整理”でもある
相続は、
人生をどう生き、
誰に何を託し、
どうつないでいくかの“最終章”。
✨今日からできる3つのステップ
1️⃣ 財産(もの)を整理して“見える化”
2️⃣ 想い(気持ち)を家族に伝える準備
3️⃣ 遺言書・保険・贈与など制度の整理
FPメッセージ:
お金を“残す”だけでは不十分。
あなたの気持ちが“届く形”で渡すことこそ、本当の相続です。
あなたの大切な人たちが、
安心して、笑顔であなたの想いを受け取れるように。
今日から少しずつ“大切に渡す準備”を始めましょう。