60代からの“ゆるやか運用”のすすめ
2025.11.7 <00957>
1. 「もう投資は遅い」と感じていませんか?
退職金を受け取った方、
あるいは定年後にゆとりのある貯蓄を手にした方から、
よくこんな声を聞きます。
「投資は若い人のものじゃない?」
「今から始めても、もう遅いでしょ?」
「老後に失敗したら怖い…」
確かに、20代・30代のように長期でリスクを取る運用は、
60代にとって現実的ではありません。
でも、**“増やす投資”ではなく、“守る投資”**なら、
60代からでも決して遅くはありません。
むしろ、これからの時代――
「預けておくだけでは目減りする」時代だからこそ、
“ゆるやか運用”を始めるのに、今がちょうど良いタイミングなのです。
2. 預金だけではお金が“静かに減っていく”
日本は長らく低金利の時代が続いています。
銀行の普通預金金利は、いまだに 0.001〜0.02%程度。
一方で、2024年以降の物価上昇率(インフレ率)は 約2〜3%。
つまり、
- 100万円を預けても1年で利息は数十円
- でも、物価は2〜3万円分上がる
…という現象が起きているのです。
これを「預金の実質価値が下がる」といいます。
せっかく貯めたお金も、
預けたままにしておくと“静かに減っていく”時代。
だからこそ、**少しでもお金を“動かして守る”**ことが大切です。
3. 60代が考えるべきは「リスクを取る」ではなく「バランスを取る」
投資というと「株で儲ける」「リスクが怖い」というイメージが強いですが、
60代の投資はそれとはまったく違います。
キーワードは、
👉 “攻める投資”ではなく、“守る運用”。
💡「守る運用」とは?
- 値動きの激しい株より、安定資産(債券・分散投資)を中心に
- 元本保証ではないが、大きく減らない設計
- 預金より少し増える「年1〜3%」を目指す
つまり、**「増やすこと」より「減らさないこと」**を目的にした運用です。
4. “ゆるやか運用”の3つの基本
ここでは、60代からでも始めやすい“ゆるやか運用”の考え方を紹介します。
✅① 「生活費」と「運用資金」を分ける
まずは、「どのお金を動かすか」を明確にしましょう。
💬 目安として:
- 生活費の2〜3年分は現金で確保(いつでも使える資金)
- それ以外の余裕資金を“ゆるやか運用”へ
たとえば、退職金1,000万円のうち、
- 生活費の予備:300万円
- 短期預金(1年以内に使う):200万円
- 長期運用(5〜10年):500万円
このように分けておくと、
「運用がうまくいかなくても生活に影響しない」という安心感が持てます。
✅② “分散投資”でリスクを和らげる
投資の世界では、「卵はひとつのカゴに盛るな」という格言があります。
60代の方にとっては特に、分散が最大の防御です。
💡具体的には:
- 株式だけでなく、債券・リート(不動産)・現金を組み合わせる
- 国内だけでなく、海外資産も少し含める
- 一度にまとめて投資せず、**時間を分けて(つみたて)**行う
たとえば、
「株40%・債券40%・現金20%」のようなバランス型ポートフォリオが理想です。
✅③ “つみたて”でゆっくり増やす
60代でも「つみたて投資」は有効です。
NISA(新NISA)なら、いつでも出し入れ自由で、利益に税金がかかりません。
たとえば、月3万円のつみたてを5年間続けると、
→ 元本180万円。
仮に年3%で運用できれば、
→ 約195万円(+15万円)になります。
大きな利益ではなくても、
“預けっぱなしより少しずつ増える”という安心を感じることができます。
5. 60代からのおすすめ“ゆるやか運用商品”
「では、どんなものを選べばいいの?」という方へ、
リスクを抑えつつ始めやすい運用先を紹介します。
💰① 個人向け国債(変動10年)
国が発行する債券で、元本保証+変動金利。
インフレに合わせて金利が上がるので、今のような物価上昇期に強い。
- 期間中でも中途換金可能(1年経過後)
- 安全性重視の人におすすめ
💹② バランス型投資信託
株式・債券・不動産などを1本で分散運用。
「世界経済にまるごと投資」できるのが特徴。
人気の例:
- eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)
- たわらノーロード バランス
→ 手数料も低く、長期保有に向いています。
💵③ 定期預金+投資信託の“ハイブリッド型”
一部を定期預金で安全に残し、
残りを投資信託などに回すスタイル。
例:
- 定期預金70%+投資信託30%
→ 値動きを抑えつつ、少しずつ増やす運用が可能。
💡FPのアドバイス
「運用=商品選び」と思われがちですが、
本当に大切なのは“自分のお金をどんな配分で持つか”。
商品はあくまで手段です。
「どんな人生を送りたいか」から逆算して決めることが、
ゆるやか運用の第一歩です。
6. 「やってはいけない」投資3つの注意点
安心して始めるために、次の3つには要注意です。
⚠️① 「高利回り・元本保証」に飛びつく
「年利8%で安心」「絶対に損しません」など、うまい話には必ずリスクがあります。
60代は「失敗のリカバリー期間が短い」ため、リスク商品の見極めが特に大切。
⚠️② 「誰かに勧められてなんとなく始める」
銀行や証券会社の提案をそのまま受け入れる前に、
自分で理解できる範囲で始めましょう。
分からない商品は“買わない勇気”が必要です。
⚠️③ 「短期で成果を求める」
60代の投資は“焦らない”が鉄則。
半年・1年の値動きに一喜一憂せず、
5〜10年スパンで見る気持ちのゆとりを持つことが大切です。
7. 投資は「お金を増やす」だけでなく「安心を増やす」
60代からの運用は、
“お金を増やす競争”ではなく、“安心を長持ちさせる工夫”です。
たとえば、
- 銀行預金だけでは不安
- でもリスクを取りすぎるのも怖い
そんなときに、
「ゆるやか運用」=中間の選択肢が生まれます。
💬 FPがよく伝える考え方:
「お金を眠らせないで、ゆっくり呼吸させましょう。」
それが、
・金利上昇に負けない
・将来の不安を小さくする
・老後の“心の安心”を育てる
という、60代からの新しい投資の形です。
8. まとめ:投資を始めるのに「遅すぎる」はない
“投資=怖い”“遅い”という思い込みを手放せば、
お金の新しい活かし方が見えてきます。
✅ 預金だけでは守れない時代
✅ でも大きなリスクを取る必要はない
✅ 「生活費」と「運用資金」を分けて安心設計を
60代からの投資は、
“儲けるため”ではなく、
**“これからの人生を安心して楽しむため”**の選択です。
お金を静かに働かせる「ゆるやか運用」で、
これからの20年を、安心と笑顔で過ごしましょう。