2025.9.26 <00915>
はじめに:年金の受け取り方で未来が変わる
「年金は65歳から受け取るもの」
そう思っていませんか?
実は、年金は受け取り方を工夫することで、金額や税金に大きな差が出るんです。
同じ額を納めていても、「いつ」「どう受け取るか」で結果が変わるのは驚きですよね。
特に40代・50代は、老後資金を考える上で**出口戦略(年金の受け取り方)**を意識することが大切です。
今回は、年金受給の基本ルールから、損をしないための戦略をわかりやすく解説します。
年金受給の基本ルール
日本の公的年金は、原則として65歳から受給開始です。
しかし、60歳〜75歳までの間で「繰上げ受給」や「繰下げ受給」を選択できます。
受給開始年齢 | 特徴 |
---|---|
60〜64歳(繰上げ) | 65歳前に受け取り開始。金額は減額され、一生続く。 |
65歳 | 標準的な受給開始年齢。 |
66〜75歳(繰下げ) | 受け取りを遅らせると、金額が増額される。 |
繰上げ受給のメリット・デメリット
「60歳から年金をもらえる」というと魅力的に感じますが、注意点もあります。
メリット
- 早くから年金がもらえるので、退職後すぐの生活費に安心感
- 働けなくなった場合の生活費をカバーできる
デメリット
- 減額率が大きい!
1か月繰り上げるごとに 0.4%減額
60歳から受給すると最大 24%減額 される - 減額は一生涯続く
長生きすればするほど、トータルでは損をする可能性が高い
損益分岐点の目安
- 繰上げをした場合と65歳受給を比較して、
77〜78歳頃が分岐点。
それ以上長生きすれば、繰上げの方が不利になります。
ポイント
健康寿命が長い方、家族に長生きの傾向がある方は、
繰上げは慎重に検討しましょう。
繰下げ受給のメリット・デメリット
繰下げ受給は、65歳以降に年金の受け取りを遅らせる方法です。
メリット
- 増額率が高い!
1か月繰り下げるごとに 0.7%増額
70歳から受給で 最大42%増 - 長生きすればするほどお得
- 夫婦のどちらか一方が繰下げすることで、世帯収入の安定感が増す
デメリット
- 65歳から70歳までの生活費を別の資金で準備する必要がある
- 途中で亡くなった場合、受給できる前に終了してしまうリスクがある
損益分岐点の目安
- 82〜83歳頃が分岐点。
それ以上生きれば、繰下げの方が有利になります。
ポイント
繰下げは「長生きリスク」に備える強力な方法です。
特に、夫婦のどちらかが繰下げを選ぶことで、世帯全体の安定収入が増えます。
受け取り方で変わる税金と社会保険料
年金は非課税ではなく、「雑所得」として課税対象になります。
また、健康保険料や介護保険料の計算にも影響するため、受け取り額が増えると負担も増加します。
税金への影響例
- 公的年金等控除:年間110万円(65歳以上)
- 年金収入が増えると、課税所得が増え、住民税・所得税が上昇
社会保険料への影響
- 国民健康保険料、介護保険料は前年の所得に応じて決定
- 繰下げによって年金額が増えると、翌年の保険料も増える可能性あり
出口戦略を考えるときは、年金だけでなく税金・保険料も含めたトータルでのシミュレーションが重要です。
年金と退職金・iDeCoの組み合わせ
年金は単独で考えるのではなく、退職金やiDeCoなどと合わせて最適化しましょう。
退職金と年金の組み合わせ
- 退職金を一時金で受け取る場合は、退職所得控除で税金が優遇される
- 分割で受け取る場合は、雑所得扱いになり課税対象に
iDeCo(個人型確定拠出年金)との関係
- iDeCoは受け取り時に「退職金」「年金」のどちらで受け取るか選択可能
- 公的年金と重なると課税が増える可能性があるため、受け取りタイミングを工夫する
具体例で比較してみよう
ケース①:65歳から標準受給
- 夫:月15万円
- 妻:月7万円
- 世帯合計:月22万円
老後20年間で
22万円 × 12か月 × 20年 = 5,280万円
ケース②:夫だけ70歳まで繰下げ受給
- 65歳〜69歳:妻のみ月7万円 → 5年間で420万円
- 70歳以降:夫21.3万円+妻7万円=合計28.3万円
70歳から20年間で
28.3万円 × 12か月 × 20年 = 6,792万円
差額:1,512万円増!
ただし、65〜69歳の5年間は年金が不足するため、
この間を貯蓄や退職金で補う必要があります。
夫婦で考える出口戦略
戦略1:夫婦で役割分担
- 夫:65歳から標準受給
- 妻:70歳まで繰下げ受給
夫の年金で65〜69歳をカバーし、70歳以降は妻の年金が増えて世帯収入アップ。
戦略2:二人とも70歳まで繰下げ
- 十分な貯蓄や退職金がある場合におすすめ
- 70歳以降、安定した高額年金で安心して生活
戦略3:片方のみ繰上げ、片方は標準受給
- 60歳で早期リタイアをしたい場合に検討
- 長生きリスクと生活費を両立させる戦略
出口戦略を成功させる3つのポイント
- ライフプランを明確にする
- いつまで働くか
- どこに住むか
- 旅行や趣味にどれだけ使うか
- キャッシュフロー表を作成する
- 将来のお金の流れを見える化
- 不足期間を事前に確認できる
- 税金・社会保険料も含めて試算する
- 受け取り額だけでなく、手取りで考える
まとめ:年金は「受け取り方」で差がつく
- 繰上げ受給:早く受け取れるが金額は減額、一生続く
- 標準受給:65歳開始が基本
- 繰下げ受給:受給を遅らせるほど増額、最大42%アップ
- 税金・保険料の影響も忘れずに確認
- 夫婦でバランスを取りながら出口戦略を立てることが大切
ただ受け取るのではなく、「いつ」「どう受け取るか」で未来は変わります。
あなたのライフプランに合わせた最適な戦略を一緒に考えていきましょう。