年金だけで足りる?

2025.11.3 <00953>

1. 「年金だけで暮らせるの?」という不安は、誰もが感じている

「年金だけで本当にやっていけるのかな?」
これは、60代の方から最も多く聞かれる質問です。

物価上昇、医療費の増加、長寿化…。
これからの老後生活を考えると、“なんとなく不安”を感じるのは自然なことです。

でも、FP(ファイナンシャルプランナー)としてお伝えしたいのは、
**「不安の正体は“数字が見えていないこと”」**だということ。

つまり、
「お金が足りるかどうか」は“感覚”ではなく“キャッシュフロー表”で確認できるのです。

キャッシュフローとは、
収入と支出、そして貯蓄の残高が“将来にわたってどう動くか”を可視化したもの。
いわば、人生のお金の地図です。

この地図があれば、
「65歳からの年金で生活が回るのか?」
「いつ・どの時期に貯蓄を取り崩す必要があるのか?」
が一目で分かります。


2. “老後の収入”と“支出”を整理することから始めよう

まずは、「年金で足りるか?」を判断するために、
収入と支出の全体像を整理してみましょう。

💰老後の主な収入

区分内容受け取り時期
公的年金老齢基礎年金・老齢厚生年金毎月(原則65歳〜)
企業年金・確定拠出年金企業が積み立てた年金一時金 or 年金形式
個人年金・iDeCo自分で積み立てた年金契約時期により開始時期が異なる
資産運用収入配当・利息・不動産収入など不定期
働く収入再雇用・パート・自営業など一時的 or 継続的

※60代前半では「在職老齢年金」の調整が入るケースも。


🏠老後の主な支出

区分内容平均月額(目安)
生活費(食費・光熱費・通信費など)毎日の生活の基本費用約23〜25万円
医療・介護費通院や将来の介護備え平均2〜3万円(将来増加)
趣味・交際費旅行・孫への支援など平均3〜5万円
住居関連費修繕・固定資産税など年間10〜20万円
特別支出冠婚葬祭・家電・車など年間20〜30万円

出典:総務省「家計調査年報(高齢者無職世帯)」などを参考。


このデータを見ると、
一般的な高齢夫婦の生活費は 月25〜27万円程度
一方、夫婦の公的年金平均額は 約22〜23万円(厚生年金世帯の場合)。

つまり、月に2〜5万円の不足が発生している家庭が多いのです。

この“わずかな不足”をどう補うか――
ここが、老後資金設計の分かれ道です。


3. “キャッシュフロー表”を作ると見えてくる3つのこと

FP相談でキャッシュフロー表を作成すると、
ほとんどの方が「もっと早く作ればよかった」と言われます。

なぜなら、数字を“見える化”することで、
不安が「漠然」から「具体」に変わるからです。


🪞キャッシュフロー表で分かる3つのこと

1️⃣ 年金で足りる時期・足りない時期が明確になる
→ いつ貯蓄を取り崩すかが分かる

2️⃣ 赤字・黒字の年が一目で分かる
→ 支出が多い年(旅行・住宅修繕・車購入)を把握できる

3️⃣ “何歳まで安心して暮らせるか”が数字で見える
→ 資産残高がマイナスになる年を事前に確認できる


📊例:夫65歳・妻63歳のモデルケース

年齢収入(年金など)支出(生活+特別費)年間収支貯蓄残高
65歳280万円330万円▲50万円1,950万円
70歳280万円310万円▲30万円1,650万円
75歳280万円320万円▲40万円1,450万円
80歳280万円350万円▲70万円1,100万円
85歳280万円360万円▲80万円700万円
90歳280万円380万円▲100万円200万円
92歳280万円380万円▲100万円0円(資金切れ)

この表を見れば、
年金だけでは92歳頃に資産が尽きるというシナリオが見えます。
でも逆に言えば、
「年間支出を20万円減らす」「70歳以降も少し働く」などの対策で、
“資金切れの時期”を100歳まで延ばすことも可能なんです。

数字が見えることで、対策の道が必ず見つかります。


4. 不足を補う“3つの方法”

「年金だけでは足りない」と分かったとき、
慌てて節約に走る人が多いですが、実は他にも選択肢があります。


① “働きながら受け取る”という選択

近年では、65歳以降も働く人が増えています。
再雇用や短時間パートで、月5万円の収入があるだけでも、
老後資金の減り方は大きく変わります。

月5万円 × 12ヶ月 × 10年 = 600万円の差
働くことは、経済的にも精神的にも「老後の保険」です。


② “取り崩し率”を決めて貯蓄を長持ちさせる

老後の資産を安全に使うためには、
「年間の取り崩し率」を設定するのが有効です。

FPの世界でよく使われるのが「4%ルール」。

たとえば、
貯蓄が2,000万円なら、
→ 年間80万円(=月6.6万円)の取り崩しが目安。

これを守れば、約30年間資金が持つ計算です。


③ “ゆるやか運用”でお金の寿命を延ばす

すべてを現金にしてしまうと、インフレでお金の価値が下がります。
一部を「守りながら増やす運用」に回すことで、
お金がゆっくり育ち、資産の減りを抑えられます。

おすすめは、

  • バランス型投資信託(リスク分散)
  • 個人向け国債(変動10年)
  • 定期+運用の“二階建て型”ポートフォリオ

運用というと難しく聞こえますが、目的は「増やす」ではなく「減らさない」。
“お金を動かさないリスク”を避けることも、老後の知恵です。


5. キャッシュフロー表を作るときのポイント

実際にキャッシュフロー表を作るときは、
完璧を目指さなくても大丈夫。

FP相談では、まず「ざっくり見える化」から始めます。


💡作成時のポイント5つ

1️⃣ 夫婦別に年金額を確認する
 ねんきん定期便や年金ネットで、将来の受給額をチェック。

2️⃣ 生活費を“実績ベース”で出す
 理想よりも「今の支出」をベースに。
 (家計簿アプリや通帳振り返りで十分)

3️⃣ 特別支出(旅行・修繕・贈与など)を含める
 忘れがちな一時出費を年単位で計上する。

4️⃣ 年金以外の資産を明確にする
 預貯金・退職金・iDeCo・運用口座などを一覧化。

5️⃣ 現実的な寿命(90歳〜100歳)まで試算する
 「ここまで持てば安心」という見通しが立つ。


6. “数字”を見ることは、“安心”を得ること

「数字を見るのは苦手」「老後の話は怖い」
そう感じる方はとても多いです。

でも、キャッシュフロー表を作る目的は“怖さを増やすこと”ではなく、
不安を小さくすること。

数字で見えると、
「足りない金額」ではなく「今できる対策」が見えてきます。

例えば、

  • 年金受給を1年繰下げると+7%
  • 支出を月1万円減らすと年間12万円の節約
  • パート収入を月2万円増やすと年間24万円の黒字化

どれも現実的な数字です。
“手の届く改善”を積み重ねれば、老後の不安は確実に減っていきます。


7. FPが見た「老後安心世帯」の共通点

ファイナンシャルプランナーとして感じるのは、
「安心して暮らしている人」には共通点があるということです。

💡その共通点とは:

1️⃣ キャッシュフローを作っている(見通しがある)
2️⃣ 夫婦で共有している(どちらか一方だけに頼らない)
3️⃣ “節約”より“調整”で対応している
4️⃣ 将来のために“現金+運用”のバランスを持っている
5️⃣ お金の話を“タブー”にしていない

お金は「心の不安」と深くつながっています。
数字を整えることは、心を整えること。
キャッシュフローを作ることは、
“これからの人生の安心地図”を描くことでもあるのです。


8. まとめ:見える安心、動ける老後へ

老後の不安をなくす方法は、
「もっと貯めること」ではありません。

大切なのは、
✅ いくら入るか(年金)
✅ いくら出るか(生活費)
✅ いくら残るか(貯蓄)
この3つを数字で見える化すること

キャッシュフローを作れば、
「足りない」ではなく「ここを整えれば安心」という
前向きなお金の見方ができます。

年金生活は、“我慢する暮らし”ではなく、“整える暮らし”。
お金を見える化すれば、
「生き方」にも自信が生まれます。

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