2025.9.25 <00914>
はじめに:年金だけで暮らせる時代は終わった?
「老後は年金だけで暮らせるのかしら…」
40代・50代になると、誰もが一度は考えるテーマではないでしょうか。
最近では「老後2000万円問題」という言葉が話題になり、
「年金だけじゃ足りないんだ!」と強い不安を感じた方も多いと思います。
しかし実際のところ、老後に本当に必要なお金は人によって大きく違うんです。
つまり、「自分の場合はいくら足りないのか」を具体的に見える化することが大切です。
今回は、老後資金のリアルな数字を分かりやすく解説し、
今日からできる準備方法をお伝えします。
年金は“ベース収入”と考える
第2回の記事でお伝えしたとおり、年金は一生涯受け取れる安心収入です。
ただし、生活費のすべてをまかなうには不足しがちです。
平均年金額の目安
2024年度の厚生労働省データによると、
65歳以上の夫婦2人がもらえる年金額の平均は以下の通りです。
夫婦タイプ | 月額年金額(平均) |
---|---|
夫:厚生年金、妻:国民年金 | 約22万円 |
共働き夫婦(2人とも厚生年金) | 約27万円 |
老後の生活費は意外とかかる!
総務省の家計調査によると、
65歳以上の夫婦2人世帯が老後に必要とする生活費は 平均27万円/月。
つまり、以下のような不足が発生します。
- 夫婦2人(夫厚生・妻国民年金)の場合
27万円-22万円 = 毎月5万円不足 - 共働き夫婦(2人とも厚生年金)の場合
27万円-27万円 = ほぼトントン
ポイント
「老後2000万円問題」というのは、
月5万円の不足が20年間続くと 5万円 × 12か月 × 20年 = 1200万円
さらに突発的な出費を含めて2000万円程度が必要、という計算です。
老後にかかるお金を分解してみよう
老後にかかる費用は、大きく分けて 3つのカテゴリー があります。
① 生活費(毎月の支出)
老後の暮らしを維持するために必要な基本的な費用です。
- 食費
- 光熱費
- 通信費
- 医療保険料 など
目安:月20~27万円
生活スタイルによって大きく変わります。
② 医療費・介護費(将来のリスク)
老後は医療費や介護費用が増える傾向があります。
- 医療費は70歳以上で自己負担2割(現役並み所得は3割)
- 介護費用は1人あたり 平均550万円
夫婦で考えると、介護費だけで 1000万円以上 必要になる可能性もあります。
③ ゆとり費(旅行・趣味・贈与)
「老後を楽しむためのお金」も忘れてはいけません。
- 国内外旅行
- 趣味や習い事
- 子どもや孫への贈与
目安:月3~5万円
これがあるかないかで、老後の満足度が大きく変わります。
老後資金を計算する3ステップ
自分に必要な老後資金を知るには、次のステップで計算します。
ステップ1:老後にかかる生活費を試算
まずは、現役時代の生活費から「老後に必要な生活費」をイメージします。
計算の目安:現役時代の生活費 × 70%
(住宅ローン完済・子どもの教育費が終わっている前提)
例:現役時代30万円 → 老後21万円
ステップ2:年金収入を確認
ねんきん定期便やねんきんネットで、自分と配偶者の年金見込み額をチェック。
例:夫14万円、妻6.8万円 → 合計20.8万円
ステップ3:不足額を計算
不足額=老後の生活費-年金額
例:老後21万円-年金20.8万円=0.2万円
生活費はほぼ年金でまかなえるが、
旅行や趣味費用を含めると不足が出る、ということがわかります。
モデルケース別シミュレーション
ケース①:夫婦2人(夫厚生・妻専業主婦)
- 老後の生活費:27万円
- 年金額:22万円
不足額:月5万円
20年で1,200万円の準備が必要
ケース②:共働き夫婦
- 老後の生活費:28万円
- 年金額:27万円
不足額:月1万円
20年で240万円の準備が必要
ケース③:夫婦+ゆとり費多め
- 老後の生活費:27万円
- ゆとり費:月5万円
- 合計支出:32万円
- 年金額:22万円
不足額:月10万円
20年で2,400万円の準備が必要
不足分を補う「3つの柱」
年金だけでは不足する分を、次の3つの柱で補っていきましょう。
① 貯蓄(安全資金)
- 退職金
- 定期預金
- 現金預金
メリット: 元本割れしない安心資産
デメリット: 金利が低く、増やす力は弱い
② 投資・資産運用(増やす力)
- 新NISAを活用した長期投資
- iDeCoでの老後資金づくり
- 投資信託・ETFなど
メリット: お金を増やせる可能性が高い
デメリット: リスク管理が必要
③ 継続収入(働く・副収入)
- 定年後も働く(パート・アルバイト)
- 趣味を活かした副業
- 年金受給を遅らせることで増額
メリット: 精神的にも健康維持につながる
デメリット: 体力や健康状態に左右される
40代・50代が今すぐできること
1. 家計の「見える化」
- 現在の生活費を把握する
- 老後に必要な生活費を計算する
- 将来の年金額を確認する
2. キャッシュフロー表を作成
未来の収支を一目で確認できる「キャッシュフロー表」を作りましょう。
- 退職金
- 年金
- 貯蓄
- 教育費
- 介護費用
将来のお金の流れがスッキリわかることで、不安が具体的な行動に変わります。
3. FP相談でプロに確認
自分で計算するのが不安な場合は、ファイナンシャルプランナーに相談を。
老後資金計画を一緒に立てることで、安心感がぐっと増します。
まとめ:老後資金は「不足額」を知ることが鍵
- 老後は生活費だけでなく、医療・介護・ゆとり費もかかる
- 年金だけでまかなえない場合、不足額を早めに確認する
- 不足分は貯蓄・投資・継続収入の3本柱で補う
「老後2000万円問題」は、あくまで平均値。
自分にとって本当に必要な金額を知ることが、安心な老後への第一歩です。