2025.11.11 <00961>
1. 「年金が始まるまで」が、実は一番不安な時期
60歳で定年を迎えたあと、
年金が満額もらえるのは通常65歳から。
この“5年間の空白期間”をどう過ごすか――
ここで多くの方が、こう感じています。
「収入が減ったのに、支出はあまり変わらない」
「退職金をどう使えばいいか分からない」
「まだ年金が始まらないのに税金や保険料が高い」
そう、60代前半は“収入減”と“支出の変化”が重なる時期。
ここを見直すかどうかで、老後の安心度が大きく変わります。
このタイミングで大切なのが、
「お金の棚卸し」=自分の資産・収入・支出を整理し直すこと。
“貯金額を確認する”だけではなく、
「どんなお金を」「いつ」「どの順番で」使っていくか
を整理しておくことが、老後の安心につながります。
2. “お金の棚卸し”は「3つの引き出し」から考える
ファイナンシャルプランナーが行う老後家計の整理は、
「金融資産」「収入」「支出」の3つを“引き出し”のように分けて見える化することから始まります。
💰① 金融資産(持っているお金の全体像)
まずは「持っているお金」を把握します。
ただし、“総額”ではなく“性質”で分類するのがポイントです。
| 種類 | 例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 生活資金 | 普通預金・定期預金 | すぐ使える現金 |
| 安心資金 | 医療費・修繕・介護備え | 年間予算で管理 |
| 運用資金 | 投資信託・NISA・iDeCo | 使う時期を決める |
| 夢・楽しみ資金 | 旅行・趣味・贈与など | 心を満たす支出 |
💬ポイント:
「このお金は何のためにあるか?」を明確にするだけで、
“使う勇気”と“残す安心”のバランスが取れるようになります。
💵② 収入(これから入ってくるお金)
年金が始まる前後の「収入源」を洗い出します。
| タイプ | 例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 雇用収入 | 再雇用・パート・短期契約 | 社会保険加入条件を確認 |
| 年金収入 | 厚生年金・国民年金・企業年金 | 受給開始年齢を確認 |
| 運用収入 | NISA・配当・不動産収入 | 税金の計算も必要 |
| その他 | 退職金・保険満期金など | 一時金は“分けて管理” |
💬ポイント:
「月ごと」ではなく「年単位」で収入の流れを把握。
税金・社会保険料も引かれた“手取り額”を基準にするのが安心です。
🧾③ 支出(これから出ていくお金)
支出は、「固定費」「流動費」「特別費」の3分類で整理します。
| 種類 | 内容 | 見直しポイント |
|---|---|---|
| 固定費 | 住居費・保険料・通信費など | 削るより“最適化” |
| 流動費 | 食費・日用品・光熱費など | 現役時代より1〜2割減を目安に |
| 特別費 | 医療・車検・旅行・修繕など | “年1回の支出”として積立管理 |
💬FPポイント:
「減らす」ではなく「整える」。
老後は“我慢の節約”ではなく、“意識的な整理”が大切です。
3. 退職金・預貯金の“使い方の順番”を決める
「老後資金をどう使うか?」で迷う方は多いですが、
実は“順番”を決めるだけでお金の不安はぐっと減ります。
📘FP流・使い方の基本ルール
| 優先順位 | お金の種類 | 理由 |
|---|---|---|
| ① | 生活費・税金・保険料 | 毎月の基盤を守る |
| ② | 医療・介護・修繕費 | 予測しにくい出費に備える |
| ③ | 趣味・旅行など | 心を満たすお金も計画に入れる |
| ④ | 投資・贈与など | 無理のない範囲で“未来に回す” |
💬ポイント:
「使う順番=安心の順番」。
優先順位をつけることで、“減っても怖くないお金”が見えてきます。
4. 「年金が始まる前」に見直しておきたい5つのチェック
年金受給前後で、お金の流れが大きく変わります。
このタイミングで必ず確認しておきたい項目をまとめました。
✅① ねんきん定期便で「受給見込み額」を確認
65歳からの年金額を具体的に把握。
→ 年金だけで足りるのか、補う金額はいくらかを計算。
✅② 健康保険・年金の切り替え
退職後は「任意継続」「国保」「配偶者の扶養」のどれが得かを比較。
→ 保険料は“前年所得”で決まるため、早めに試算を。
✅③ 住民税・国保料の“翌年負担”に注意
退職金をもらった翌年は、住民税・国保料が高くなる。
→ 「税金用積立」をしておくと安心。
✅④ 保険の見直し
現役時代に加入した生命保険・医療保険は、
今のライフステージに合っているか再点検。
→ “保障から貯蓄へ”シフトを。
✅⑤ 預貯金の預け先を整理
複数口座・証券口座を持っている場合は、
→ 「メイン」「積立」「老後用」に口座を3つに整理。
5. “お金の棚卸し”は「未来の使い方」を描く作業
お金を整理するとき、多くの人が「減らさない」ことを意識します。
でも本当に大切なのは――
「どんな人生に、どうお金を使っていきたいか」を描くこと。
💡たとえば…
- 趣味の園芸を続けたい → 月5,000円の“心の予算”を確保
- 年1回は旅行に行きたい → 年10万円を「楽しみ積立」に
- 孫への贈り物を続けたい → 年3万円を「笑顔資金」として
こうして“目的”をもってお金を分けるだけで、
支出が整理され、後悔のない使い方になります。
6. まとめ:「見える安心」は、準備から生まれる
60代前半は、お金の流れが変わる「家計の転換期」。
不安の正体は、“知らないこと”と“見えないこと”です。
💬FPからのメッセージ:
「お金の整理は、未来の安心をデザインすること。」
今日からできる3つの行動:
1️⃣ 金融資産・収入・支出をリスト化する
2️⃣ 年金開始までの“つなぎ資金”を明確にする
3️⃣ お金の使い方に“目的”をもたせる
年金が始まる前に整理をしておくことで、
「焦らない」「迷わない」「安心して使える」暮らしが始まります。