“収入の波”をならす

― 50代から始める新しい家計管理術 ―

2025.11.27 <00977>

1. 50代は「収入が不安定になる」入口

50代に入ると、多くの男性が同じ悩みに直面します。

✔ 昇給が止まった
✔ ボーナスが減ってきた
✔ 役職定年が見えてきた
✔ 会社の制度変更で手取りが下がった
✔ 転職?再雇用?選択肢が増えて迷う

現役世代のままでも、収入が安定しないのが“50代のリアル”。

さらに、
・教育費のピーク
・住宅ローンの残り
・親の介護
・健康不安
など、“出口より入口”が多い年代でもあります。

いま感じている「行き場のない不安」は、
実はあなたの努力不足ではなく “時期の必然” です。

だからこそ、50代の家計管理は
「増やすより整える」 が本質になります。


2. 収入の波は「誰にでも」やってくる

FPとして何千世帯も見てきましたが、
50代の家計に共通していることがあります。

💡共通点

  1. ボーナスは確実に減る
  2. 手取りは横ばいか、ややマイナス
  3. けれど支出はほぼ変わらない
  4. その差を“貯蓄”で補っている

つまり、
収入の波を“自分だけの問題”と思ってしまうと、
心が折れてしまう。

でも、本当は逆。

「波があるのが普通」
「波をならせる人が強い」

家計は“収入の多さ”より“流れの作り方”で安定します。


3. 波をならす家計管理①

固定費を“50代バージョン”にする

50代は、支出の形を見直すのに最適な世代。

現役最盛期のままの家計を引きずると、
収入が減ったときに一気にしんどくなります。

✔ 見直したい固定費

  • スマホ・通信費
  • 保険料(特に死亡保障・養老型)
  • サブスク
  • 住宅関連(火災保険・メンテ)
  • 車の維持費
  • 教育費の扱い(子どもが大学生の場合は特に)

FP視点で見ると、
固定費の最適化だけで 年間20〜40万円 改善できることは珍しくありません。

📌ポイント

「削る」ではなく
“今の自分に合う形に戻す”
と考えること。


4. 波をならす家計管理②

ボーナスを“生活費の前提”にしない

50代で最も危険なのは、
「ボーナスありきの家計管理」。

なぜなら――
ボーナスは必ず波が来る からです。

会社員の50代で、
・役職が変わる
・部門異動
・業績評価
・会社全体の利益
などにより、支給額が乱高下するのは当たり前です。

✔ だから、ボーナスは

  • “貯蓄”
  • “特別費”
  • “ローンの一括返済”

など、「未来に回すお金」として扱うのが鉄則。

ボーナスを“あてにしない生活費”こそ、
収入の波に強い家計です。


5. 波をならす家計管理③

年間家計で管理する

50代は“月間管理”より“年間管理”が向いています。

その理由は:

✔ 支出のバラつきが増える

  • 車検
  • 固定資産税
  • 子どもの学費
  • 医療費
  • 冠婚葬祭
  • 旅行

月ごとの収支だけを見ると
「赤字だ!」と焦る月が必ずあります。

でも年間で見ると――
実は黒字だった、というケースが本当に多い。


💡FPが勧める「年間家計術」

1️⃣ 年間の特別費をリスト化
2️⃣ 年間の支出総額を出す
3️⃣ 年間の収入総額と比較する
4️⃣ 差額で“貯蓄計画”を立てる

年間収支が見えると、
収入の波を慌てずに受け止められます。


6. 波をならす家計管理④

50代こそ“貯めるより分ける”

50代は貯金のピークを作る時期ではありません。
むしろ、
「貯め方」より「分け方」が重要」 になります。

✔ 50代に必要な4つの財布

  1. 生活財布
  2. 教育・家族イベント財布
  3. 将来の備え財布(医療・介護・修繕)
  4. 自分の心を満たす財布(趣味・旅行)

やみくもに貯めるよりも、
目的別に“仕分ける”ほうが、
家計は圧倒的に安定しやすくなります。


7. 波をならす家計管理⑤

“リスクの取り方”を変える

50代は投資の目的が変わるタイミング。

✔ 40代まで

「増やすための投資」

✔ 50代から

「守りながら育てる投資」

つまり、
大きく勝つ運用よりも
“小さく負けない運用” が重要になります。


💡50代の投資バランス例

  • 現金・預金:40%
  • 安定型投信・債券:30%
  • 株式・成長型投信:30%

ポイントは、
・リスクを一点集中させない
・下がった時に生活に影響させない

50代は“攻めすぎない資産管理”が、
収入の波に負けない鍵です。


8. 収入の波があっても「揺るがない家計」のつくり方

ここまでをまとめると、
50代からの家計管理はシンプルです。

✔ 揺るがない家計の5原則

1️⃣ 固定費を最適化
2️⃣ ボーナスを生活費に含めない
3️⃣ 毎月ではなく“年間”で管理
4️⃣ お金を目的別に“分ける”
5️⃣ 小さく負けない投資に切り替える

この仕組みがあれば、
収入の増減に関わらず、家計は安定します。


9. 50代は「家計を整えるラストチャンス」ではない

“もう遅い”という人がいますが、完全に誤解です。

50代はむしろ、
人生の後半を設計し直す最高のタイミング。

  • 子どもの進学が見えてきた
  • 親の介護が現実になってきた
  • 健康に気を付けたいと思い始めた
  • 将来の働き方も柔軟にできる
  • 夫婦での過ごし方を考えるようになる

これらはすべて、
「家計を見直す理由」であり「チャンス」です。

今の行動が、
60代・70代の暮らしの質を大きく左右します。


10. これからの50代へ

最後に、FPとしてのメッセージを。

50代は、“整えれば強い”。
収入が上下しても、家計の根っこが整っていれば折れない。

収入の波をならし、
安定した基盤をつくることができれば、
あなたの60代・70代は「自由度が高い人生」へと変わります。

人生後半は、
“稼ぐ力”より“整える力”。
今日から、少しずつ始めていきましょう。

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