2025.11.12 <00962>
1. 「収入が減る」よりも怖いのは、“支出がそのまま”
定年退職を迎えたあと、多くの方がまず気にするのは――
「収入が減ること」
でも実は、FP相談で家計を見ていて感じるのは、
**“支出が現役時代のまま”**のほうが、ずっと危険だということです。
退職後は、年金やパート収入など、収入は減少します。
それにもかかわらず、
・現役時代と同じペースで外食や買い物をしてしまう
・保険料や通信費を見直さず払い続ける
・子どもや孫への支援を続けている
など、「支出のリフォーム」がされていないケースが多いのです。
お金の流れを変えないまま老後に入ると、
“気づかないうちに赤字”になってしまうことも。
だからこそ、
「収入を増やす」よりも、「支出を整える」ことから始めましょう。
2. “家計のリフォーム”とは、「削る」ではなく「整える」こと
「家計を見直す」と聞くと、多くの方が“節約”をイメージします。
でもFPとして伝えたいのは、**「削る」より「整える」**という考え方。
それは、家のリフォームと同じです。
古い部分を直して、必要な部分に光を当てる。
家計も「今の暮らしに合う形」に整えるだけで、自然と安心が生まれます。
3. 家計リフォームの第一歩:「固定費」から整える
老後の家計改善で最も効果が大きいのが固定費。
一度見直せば、毎月ずっと節約効果が続きます。
💡① 保険の見直し
現役時代に加入した保険を、そのままにしていませんか?
- 子どもが独立している
- 住宅ローンが完済している
- 貯蓄で医療費に備えられる
こうした場合、高額な死亡保障はもう不要です。
保険は「残すため」から「守るため」に切り替えを。
✅ 見直しのポイント
- 医療保険:入院日数短縮 → 日額型より実費型へ
- がん保険:複数加入より、内容を一本化
- 貯蓄型保険:金利・返戻率を確認し、必要に応じて整理
💬 FPの目安:
保険料は手取り収入の5%以内が理想です。
💡② 通信費の見直し
スマホ・Wi-Fi・固定電話――気づけば1万円超えのケースも。
格安スマホ・ネット契約の見直しで、月5,000円前後の削減も可能です。
- 家族割から個人プランへ変更
- スマホ決済・ポイント活用も検討
- 不要なオプション・有料アプリの整理
💡③ サブスク・会費・クレジット引き落としの点検
動画・新聞・保険・クラブ費――毎月の小さな固定費が積もると大きな負担に。
クレジット明細を1年分チェックして、「使っていない定期支出」を止めるだけで月1万円以上改善できることもあります。
4. 家計リフォームの第二歩:「変動費」を“ゆるやか予算化”
固定費を整えたら、次は**変動費(生活費)**を「予算化」して管理します。
老後の家計で大切なのは、「使いすぎない」よりも「安心して使える仕組み」。
📊 FP流・ゆるやか予算の立て方
| 項目 | 月の予算 | ポイント |
|---|---|---|
| 食費 | 60,000円 | 外食・惣菜も含めて管理 |
| 日用品 | 10,000円 | 年間ベースで波をならす |
| 光熱費 | 20,000円 | 季節差を想定して平均化 |
| 交際・娯楽費 | 20,000円 | “心の栄養費”として確保 |
💬FPポイント:
食費や娯楽費を“削る”のではなく、“上限を決めて安心して使う”発想へ。
「残ったら貯める」ではなく、「最初に貯めて残りを使う」ほうが継続できます。
5. 家計リフォームの第三歩:「特別支出」を年間で管理
老後家計の落とし穴が、“年に数回の出費”。
- 冠婚葬祭・孫の行事
- 家電・車検・修繕費
- 医療費・税金・旅行費
これらを「毎月の生活費」と分けて、“特別費口座”を作るだけで家計が安定します。
💡やり方はシンプル
① 年間で発生しそうな支出をリスト化
② 合計を12で割って、毎月積立
例)年間36万円の特別費 → 月3万円を積立
→ 突発的な出費にも慌てず対応でき、「赤字月」がなくなります。
6. “整える家計”を実現する3つのツール
FP相談で実際に活用している「整えるツール」を紹介します。
✅① 年間家計簿(Excel or ノート)
月単位ではなく“年間の流れ”で支出を見ることで、
「赤字・黒字」より「バランス」がわかります。
✅② キャッシュフロー表
年単位での収入・支出・貯蓄残高を見える化。
老後20〜30年の見通しを数字で確認できるので、
「使っても大丈夫」の根拠になります。
✅③ 支出ダイアグラム
支出を円グラフにして、「心地よい割合」をチェック。
(生活費60%/楽しみ20%/将来20%)など、感覚ではなく可視化して整える。
7. 家計を整えると、“心”も整う
老後家計の目的は、節約ではありません。
「数字の安心」を持って、“自分らしく暮らす”こと。
FPとして感じるのは、
支出を整えた方ほど、表情が穏やかになり、
「これからの暮らしが楽しみ」と話してくださること。
💬お金を整えると、こんな変化が起きます。
- 先の見通しが持てる
- 無駄遣いの罪悪感がなくなる
- 「これでいい」が増えて心が軽くなる
つまり、家計リフォームは「安心のリフォーム」。
暮らしの土台を整えることが、老後の幸せを支える第一歩です。
8. まとめ:お金は「増やす前に、流れを整える」
収入が減る老後こそ、
焦って投資を始めたり、副業を探すよりも、
まずは“今あるお金の流れ”を整えることが先決です。
💡FPが伝えたい3つのリフォーム術
1️⃣ 固定費を見直して「無駄を減らす」
2️⃣ 変動費を予算化して「安心して使う」
3️⃣ 特別費を積立して「ブレない家計をつくる」
お金の整理は、人生の整理。
整った家計からは、安心と笑顔が生まれます。
“収入が減る不安”を、“整える安心”に変えていきましょう。