2025.9.16 <00905>
はじめに
「定年後も働いたほうがいいのかな…」
「再雇用って実際どうなの?」
50代後半になると、多くの方が退職後の働き方について悩み始めます。
特に夫が定年退職を迎える家庭では、家計の収入が大きく変わるため、老後の生活設計に直結する大きな問題です。
再雇用や再就職を選ぶべきかどうかは、
**「お金」「気持ち」「ライフプラン」**のバランスで考えることが大切。
この記事では、再雇用・再就職それぞれのメリット・デメリット、
そして判断するためのチェックポイントを、わかりやすく解説します。
1.退職後の選択肢は大きく分けて3つ
定年退職後の働き方には、主に次の3つの選択肢があります。
① 再雇用(同じ会社で働く)
会社にそのまま残り、再雇用制度を利用して働き続ける方法です。
最近では、65歳までの継続雇用が義務化され、70歳までの延長も推奨されています。
特徴
- 仕事内容は現役時代とほぼ同じ
- 給与は現役時代の50~70%程度に下がるケースが多い
- 雇用形態は嘱託社員やパート契約が中心
メリット
- 職場や仕事内容に慣れているため、負担が少ない
- 年金受給開始までの収入を安定して得られる
- 厚生年金や社会保険に継続加入できる
デメリット
- 給与が大幅に下がる
- モチベーションが維持しにくい
- 仕事内容は選べないことが多い
② 再就職(別の会社で働く)
これまでの経験を活かして、新しい職場で働く方法です。
介護や事務、接客業など、比較的年齢に関係なく働ける職種も増えています。
メリット
- 自分に合った働き方を選べる
- 給与や勤務地を自分で交渉できる
- 新しい環境でのやりがいが得られる
デメリット
- 採用されるまでに時間がかかる場合がある
- 退職直後は失業保険を受給するための手続きが必要
- 未経験分野だと慣れるまでが大変
③ 完全リタイア(働かない)
退職後は働かずに完全リタイアする選択もあります。
趣味や旅行、地域活動などを中心に、自由な時間を過ごすことが可能です。
メリット
- 自分の時間を最大限に楽しめる
- ストレスが減る
- 家族との時間が増える
デメリット
- 収入が年金だけになるため、家計が厳しくなる可能性がある
- 社会とのつながりが減り、孤独感を感じることも
2.再雇用・再就職を選ぶ前に考える3つの視点
「お金のために働くべき?」と迷ったときは、
次の3つの視点で考えると答えが見えてきます。
① 家計面:年金だけで生活できるか?
まず確認すべきは家計のシミュレーションです。
年金受給開始までの数年間や、老後30年間をどう過ごすかを数字で把握しましょう。
生活費の目安
- 夫婦2人で月25~30万円
- 医療費や介護費は将来的に増加
チェックポイント
- 現在の貯蓄額と退職金
- 年金受給見込み額(ねんきん定期便で確認)
- 再雇用で得られる収入
例)
月の生活費30万円
年金見込み額20万円
→ 月10万円不足
→ 再雇用で月10万円以上稼げれば生活は安定
② 気持ち・やりがい
働き続ける目的はお金だけではありません。
**「自分がどうありたいか」**を考えることも大切です。
- 社会とのつながりを持ち続けたい
- 自分の経験を後輩に伝えたい
- 趣味や家庭との時間を優先したい
もし「もう仕事に疲れた」と感じるなら、
完全リタイアや短時間勤務という選択肢もアリです。
③ 健康状態とライフプラン
60歳を過ぎると、健康状態が働き方に直結します。
体力や持病の有無、家族の介護なども考慮して判断しましょう。
- 体力に不安がある → 週2~3日勤務や在宅ワークも検討
- 親の介護が必要 → 柔軟に働ける職場を探す
- 旅行や趣味を楽しみたい → 期間限定の仕事を選ぶ
3.再雇用と再就職の“お金の違い”
働き方によって、もらえるお金や制度の活用方法が大きく変わります。
① 再雇用の収入はどのくらい?
再雇用制度では、給与は現役時代の50~70%程度に下がるケースが一般的です。
例:現役時代の月収30万円 → 再雇用後は月15~21万円
ただし、厚生年金や健康保険に加入できるため、将来の年金額を少し増やすことができます。
② 再就職の場合は失業手当を活用
定年退職後にすぐ再雇用されない場合は、失業手当を活用できます。
勤続20年以上で退職した場合、最大150日分が受給可能です。
失業手当の流れ
- 退職後にハローワークで手続き
- 7日間の待期期間後、3か月間の給付制限(場合による)
- 失業手当の受給開始
ポイント
再雇用を選ぶと失業手当は受け取れません。
一度失業手当を受給してから再就職する方法もあります。
4.「働く」を選ぶときのステップ
再雇用・再就職をスムーズに進めるために、次のステップで準備をしましょう。
STEP1:情報収集
- 会社の再雇用制度の内容を確認
- ハローワークや求人サイトで働きたい仕事をリサーチ
- 年金や失業手当の制度を理解しておく
STEP2:家計シミュレーション
- 年金+再雇用収入で生活費をまかなえるか
- 老後30年間の貯蓄推移をキャッシュフロー表で確認
- 不足分をどう補うか考える
STEP3:家族と話し合う
働き方は家族にも影響します。
- 夫婦で「働く目的」や「時間配分」を共有
- 親の介護や子どもの支援とのバランスを確認
5.再雇用か再就職か迷ったときの判断基準
最後に、再雇用と再就職を比較して整理しましょう。
比較項目 | 再雇用 | 再就職 |
---|---|---|
収入の安定 | ◎ 安定している | △ 仕事が決まるまで不安定 |
職場の慣れやすさ | ◎ 慣れた環境で安心 | △ 新しい環境に慣れる必要あり |
キャリアの自由度 | △ 選択肢が少ない | ◎ 自分に合った仕事を選べる |
失業手当 | × 受給不可 | ◎ 受給可能 |
厚生年金加入 | ◎ 継続加入 | △ 条件による |
まとめ:自分に合った「働き方」を見つけよう
退職後の働き方は、人生後半をどう生きるかに直結する大切な選択です。
- 家計の安定を優先するなら「再雇用」
- 新しい挑戦をしたいなら「再就職」
- 趣味や家庭を重視するなら「完全リタイア」
大切なのは、「働くことが目的」ではなく、
「自分が望む暮らしを実現する手段」として働くことです。
迷ったときは、家計のシミュレーションを行い、
数字と気持ちの両面から最適な選択をしていきましょう。