― “年金+少しの収入”で暮らす安心設計 ―
2025.11.15 <00965>
1. 「もう働きたくない」は、甘えではない
退職を迎える60代の多くが、口をそろえてこう言います。
「もう、朝の満員電車に乗るのは嫌」
「健康に不安もあるし、家で穏やかに過ごしたい」
「でも…働かないとお金が足りない気がして不安」
この“働かない罪悪感”を持ってしまうのは、
「現役時代=働くことが当たり前」という長年の思い込みがあるからです。
でも、老後は“頑張る時代”から“整える時代”へ。
「どう働くか」よりも、「どう暮らすか」。
焦って再就職するよりも、
**“働かなくても暮らせる仕組み”**を整えることの方が、
長い目で見て安心につながります。
2. “働かない”暮らしを成り立たせる3つの柱
老後の安心設計は、次の3つの柱で成り立ちます。
| 柱 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| ① 年金収入 | 国の基礎となる生活資金 | 受取時期と税金に注意 |
| ② 資産収入 | 貯蓄・運用からの引き出し | 年3〜4%の取り崩しで長持ち |
| ③ プチ収入 | 趣味・特技・在宅ワークなど | 心のハリ+少しの安心 |
FPの視点から見ると、
「完全に働かない」よりも、
**“無理のない範囲で小さく働く”**が、心にも家計にもベスト。
収入が月に1〜2万円でも、
「自分で稼いでいる」という感覚が精神的な安心につながります。
3. 年金だけで足りる?を“数字”で見える化
「年金だけで暮らせるか?」を考えるとき、
まず必要なのは“感覚”ではなく“数字”です。
💰平均的な夫婦の年金収入(厚労省データより)
| タイプ | 月額目安 | 年額目安 |
|---|---|---|
| 夫:会社員・妻:専業主婦 | 約22万円 | 約260万円 |
| 共働き(両方厚生年金) | 約28〜30万円 | 約340万円 |
| 国民年金のみ(自営業夫婦) | 約13万円 | 約155万円 |
💡一方、支出の平均
| 項目 | 月額 | 備考 |
|---|---|---|
| 食費 | 65,000円 | 外食・調味料費含む |
| 光熱・通信 | 25,000円 | 季節変動あり |
| 医療・保険 | 15,000円 | 加齢とともに増加 |
| 交際・娯楽 | 25,000円 | 旅行・趣味費用など |
| その他雑費 | 30,000円 | 消耗品・衣料など |
| 合計 | 約26万円/月 | 年312万円程度 |
つまり、
年金収入だけでは、年30〜50万円ほど不足するケースが多いのです。
この差を「働いて埋める」のではなく、
「整えて埋める」ことが、FPの提案する新しい老後スタイルです。
4. 支出を“減らす”ではなく“整える”
働かなくても暮らせる仕組みをつくるには、
“節約”ではなく“整える”がキーワード。
💡整える=「暮らしの型」を変える
| 見直しポイント | 現役時代のまま | 老後型に整える |
|---|---|---|
| 通信費 | 1万円超 | 格安プランで月3,000円に |
| 保険料 | 手厚い死亡保障 | 医療+終身にシンプル化 |
| 食費 | 外食・まとめ買い | 自炊+地元スーパーで無理なく |
| 交際費 | 月3万円以上 | 「会う相手を選ぶ」意識に |
| 車 | 2台持ち | 必要な時に“シェア”で十分 |
FPメッセージ:
支出を整えるのは、我慢ではなく「自分に合った形に戻す」こと。
小さな工夫で、家計の安心は大きく変わります。
5. “プチ収入”が心を支える
「完全に働かない」と決めると、社会とのつながりが減って心が沈むこともあります。
だからこそ、**“働かない”ではなく“無理なく関わる”**を意識。
💡無理なくできる「プチ収入」例
| 内容 | 目安収入 | メリット |
|---|---|---|
| 自宅での手作り販売(ハンドメイド・野菜など) | 月5,000〜1万円 | 趣味と収入を両立 |
| オンライン講座サポート・アンケート回答 | 月2,000〜5,000円 | 自宅で完結 |
| 民泊・貸しスペース運営 | 月1〜3万円 | 資産を活かせる |
| 週1日の軽作業・図書館勤務など | 月2〜3万円 | 人とのつながりを保てる |
💬FPの視点:
「稼ぐ」ではなく、「動くきっかけ」としての仕事。
無理せず“社会とつながる時間”が、心の安定にもつながります。
6. 貯蓄の「取り崩しルール」を決めておく
働かない生活では、貯蓄の取り崩しが現実的になります。
ここで大事なのは、“減らさない”ではなく、“計画的に使う”こと。
📘FPの黄金ルール
- 年間の取り崩しは貯蓄総額の3〜4%以内
- 「定期引き出し」で残高を管理
- 「特別支出口座」をつくって旅行・修繕費などを別管理
💡例:貯蓄2,000万円の場合
→ 年80万円(=月6〜7万円)までの取り崩しが安心ライン。
年金+この補填額で“ゆとりある生活”が可能に。
7. “働かない安心”は「数字」と「気持ち」の両輪で
FPとしてお伝えしたいのは、
「働かない不安」は、実は“お金の見通しのなさ”が原因。
キャッシュフローを一度作ってみるだけで、
「年金+貯蓄+小さな収入」で十分暮らせると気づく方が多いです。
💬実際の相談事例
ご夫婦で月25万円の支出。
年金22万円+家庭菜園収入+少しの取り崩しで黒字化。
「もう働かなくてもいい」と笑顔で話せるように。
8. まとめ:「がんばらない暮らし」が、いちばん安心
老後の安心は、“収入の多さ”ではなく“整った家計”から生まれます。
💡FPが伝えたい3つの安心設計
1️⃣ 支出を「整える」ことで不安を減らす
2️⃣ 年金+貯蓄+プチ収入で“3本柱”をつくる
3️⃣ 取り崩しのルールを決めて、数字で見える化
💬メッセージ:
働かない勇気は、「自分の暮らしを信じる力」。
がんばらなくても、心豊かに生きられる家計はつくれます。
今日から、
“稼ぐ”より“整える”を始めてみましょう。