2025.9.17 <00906>
はじめに
退職は人生の大きな節目。
「退職したら、まず何をすればいいの?」
「年金や保険の手続きは会社がやってくれるの?」
このような疑問を抱える方は少なくありません。
実は、退職後は自分で行わなければならない手続きがたくさんあります。
特に、社会保険や年金、税金は手続きを忘れると
・保険料が未納になる
・年金受給額が減る
・税金が余分にかかる
など、将来の生活に大きな影響を与えることも。
この記事では、ファイナンシャルプランナーの視点から、
退職後に必ず確認しておきたい手続きをわかりやすく解説します。
1.退職後にまず確認すべき3つの分野
退職後に必要な手続きは、大きく分けると以下の3つです。
分野 | 主な手続き | 手続き先 |
---|---|---|
社会保険 | 健康保険、雇用保険 | 市区町村役場、ハローワーク |
年金 | 国民年金への切り替え | 市区町村役場 |
税金 | 住民税、所得税、確定申告 | 市区町村役場、税務署 |
退職したら、まずはこの3つを漏れなく確認しましょう。
2.社会保険の手続き
退職後、会社の健康保険からは自動的に脱退します。
そのため、健康保険をどうするかをすぐに決める必要があります。
① 健康保険の選択肢は3つ
退職後の健康保険は、主に以下の3つの方法から選びます。
選択肢 | 特徴 | 保険料 |
---|---|---|
任意継続 | 退職した会社の健康保険を2年間継続 | 在職時の約2倍(会社負担分も自己負担) |
国民健康保険 | 市区町村が運営する保険 | 所得に応じて計算 |
家族の扶養に入る | 配偶者などの扶養に入る | 保険料は不要 |
ポイント
- 退職後20日以内に手続きが必要
- 保険料や扶養条件を比較して決めるのが安心
② 雇用保険(失業手当)の手続き
退職後にすぐに再就職しない場合は、**失業手当(基本手当)**を受給できます。
手続きの流れ
- 離職票を受け取る(退職後10日以内に会社から送付)
- ハローワークに提出
- 7日間の待期期間+給付制限期間(通常3か月)
- 失業手当の受給開始
受給日数の目安
- 勤続20年以上:150日分
- 勤続10年以上20年未満:120日分
ワンポイント
定年退職の場合は、給付制限がなくスムーズに受給できるケースが多いです。
3.年金の手続き
退職すると、会社員として加入していた厚生年金から、
国民年金に切り替える手続きが必要です。
① 国民年金への切り替え
手続きは退職日から14日以内に、市区町村役場で行います。
必要な書類
- 年金手帳
- 離職票または退職証明書
- 本人確認書類(マイナンバーカードなど)
切り替えを忘れると、未納期間として扱われ、
将来の年金受給額が減ってしまいます。注意しましょう。
② 任意加入制度を活用する
60歳で退職し、まだ年金受給開始年齢(65歳)に達していない場合は、
任意加入制度を利用できます。
これにより、年金加入期間を増やし、将来の受給額を増やすことが可能です。
4.税金の手続き
退職後は、会社が代行してくれていた税金の手続きを、
自分で行う必要があります。
① 住民税
住民税は、前年の所得に基づいて課税されます。
退職後も翌年の6月までは支払いが続くことを覚えておきましょう。
支払い方法は2つです。
- 会社から一括で天引き(退職時にまとめて支払い)
- 退職後に自分で納付(市区町村から納付書が届く)
② 所得税と確定申告
退職後に以下の条件に当てはまる場合は、確定申告が必要です。
- 医療費控除を受けたい
- 退職金を分割で受け取った
- 退職後にアルバイト収入などがあった
- 株式や投資信託で利益が出た
退職した年は、1月~退職月までの所得を自分で申告する必要がある場合があります。
③ 退職金と税金の関係
退職金には、退職所得控除という大きな優遇制度があります。
計算式
- 勤続20年以下:40万円 × 勤続年数
- 勤続20年超:800万円 + 70万円 × (勤続年数 − 20年)
例:勤続35年の場合
800万円 + 70万円 × 15年 = 1,850万円
退職金がこの金額以内なら、所得税はかかりません。
5.退職後にやるべき手続きのスケジュール
退職後の手続きは期限が決まっているものが多いため、
スケジュール管理がとても重要です。
時期 | 手続き内容 |
---|---|
退職日当日 | 離職票、源泉徴収票、健康保険証を受け取る |
退職後14日以内 | 国民年金・健康保険の切り替え |
退職後20日以内 | 任意継続保険の申請 |
退職後すぐ | 失業手当の手続き(ハローワーク) |
翌年2月~3月 | 確定申告 |
ポイント
期限を過ぎると、保険料が未納扱いになったり、
失業手当が受け取れなくなる可能性があります。
6.手続きでよくある失敗例と対策
失敗例1:健康保険の手続きを忘れた
→ 国民健康保険の保険料が高額請求されることも。
対策:退職前に家族の扶養条件を確認しておく
失敗例2:国民年金への切り替えを忘れた
→ 未納期間が発生し、将来の年金が減額される。
対策:退職後14日以内に必ず手続きを行う
失敗例3:住民税の支払いを想定していなかった
→ 退職後の家計が急に苦しくなる。
対策:退職金や貯蓄から住民税分を確保しておく
7.退職前に準備しておくべきこと
スムーズに手続きを進めるためには、退職前の準備が重要です。
- 年金手帳やマイナンバーカードを整理
- ねんきん定期便で年金額を確認
- 退職金の受け取り方法を会社に確認
- 家計のシミュレーションをして生活費を把握
まとめ:退職後の手続きで人生後半をスムーズに
退職後は、社会保険・年金・税金など、やるべき手続きが一気に増えます。
特に期限が決まっているものが多いため、
**「知らなかった」「忘れていた」**では済まされないことも。
退職後の不安を減らすために、
- 健康保険をどうするか決めておく
- 国民年金の切り替えを忘れない
- 税金の支払いスケジュールを把握しておく
これらを意識して準備しておきましょう。
正しい知識を持ち、スムーズに手続きを進めることで、
安心して第二の人生をスタートできます。